鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

5/19 「別に…」

沢尻エリカ主演の「母になる」がつまらない。
だが、何故か毎週欠かさず見てしまう。
なんでだろう?
自分の息子が3歳で誘拐され、10年後現れ、再び母親として、家族として再生していくストーリー。今週は育ての親(小池栄子)が沢尻の前に現れ、また一波乱起こる、という流れだった。
何となく今後の展開が読めてしまうが、何故か毎週観てしまう。
彼女の演技が良いからか?
子供を無くし、突然戻って来た他人に育てられた我が子に戸惑う母親の微妙な感じを上手く演じている気がする。

そんな彼女に対して、最近まで"勘違いしていた"事がある。
沢尻エリカ、と言えば、あの「別に…」発言だ。
俺はあの発言が批判されたのは、彼女のあの態度だからと思っていたが、違うようだ。

東直己の作品を読みはじめて7、8年になる。
東直己と言えば、大泉洋主演で映画化された「探偵はバーにいる」シリーズが有名だが、実は氏の代表作の一つ、凄腕の殺し屋、榊原健三の「始末屋」シリーズのファンである。

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ファンのついでに「探偵はバーにいる」シリーズも読んでいる。
このシリーズは札幌・ススキノのバー『ケラー』にいつもいる探偵"俺"(作中でこの探偵の名前は明らかにならない)に関わる、持ち込まれる事件を描いた作品だが、その中の「駆けてきた少女」という長編作で、探偵の"俺"が「別に…」と言った少女に不機嫌になり、長々と説教するシーンがある。
「別に…」と言った少女に探偵は「俺は『別に…』という言葉が嫌いだ。それを言うなら俺の前から消えろ…」とまで述べる。
少女はただ探偵の問いに、軽く「別に…」と言っただけである。
読みながら(そんなに怒らなくても……)と思った。

この作品が書かれたのは2006年。沢尻エリカの「別に…」は、確か、2007年位だった気がする。
作者の東氏はおそらく「別に…」という言葉が本当に嫌いなのだろう。

確かに他人に「別に…」と言われると何か疎外された感じや、見下された気がする。
「アンタには関係ないから」と関わりを拒絶された感じがする。
他人から拒絶されることを物凄く嫌う人間がいる。
他者は自分の介入に寛容であり、自分は他者に介入しても良い人間である、という思い込みだ。
それを拒絶されるので腹が立つのだろう。
以前の会社の上司もそんな奴だった。
やたらと話題に入りたがり、「別に何でもないっす」というと明らかにムクれていた。
カッコ悪い。

つまり、あの沢尻エリカの「別に…」に世間があれほど批判されたのは彼女の態度ではなく(それも多分にあると思うが…)、「別に…」と言う言葉に反応したからではないか?
つまり、『新人のくせに「別に…」なんて他者を拒絶しやがって!」という、その言葉自体への嫌悪感だったのでは?

それを思うと、彼女はかなり孫をしている気がする。


ちなみに、この『駆けてきた少女』はこれだけ読んでも、何の話かさっぱりわからない。
東直己の他の作品、『ススキノハーフボトル』等を読むと事件の全体が分かり、かなり面白い作りになっている。

また、同氏の『残光』はこの『ススキノ探偵シリーズ』や俺が好きな『始末屋シリーズ』、『探偵・畝原シリーズ』がクロスオーバーする東直己氏の作品キャストが総出演する名著である。
是非、読んでいただきたい。