鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

6/19 ブラックな小さな王様

小学生の頃、"みっちー"(アダ名)という幼馴染がいた。
オレは何気に彼を尊敬の目で見て、慕っていた。
それは彼が"勇気ある"人間だったからだ。
例えば、誰かに「サッカー、やらないか?」なんて誘われる。
大してスポーツが得意ではない俺は本心では嫌なのだか、誘われた相手に遠慮して、断るともう誘ってもらえなくなると思い、さらに少しだけ『…ひょっとしたら今回は活躍できるかも?』という淡い期待を抱き、参加してしまう。
そして、大した活躍などできずに情けない気持ちで帰宅していた。

だか、"みっちー"は「…俺、いいや」とあっさり参加を断るのだ。
そして一人颯爽と帰っていく。
その後ろ姿を何回か見た事があった。
そこには『別にもう誘われなくても良いよ』、『…勝手にやってろよ』という他者を突き放す"勇気"と孤立を恐れない"覚悟"を感じた。

その姿勢に俺は、子供ながらに感心して慕っていたのだ。

しかし、高校、大学、社会人と過ぎていき、様々な経験を積むウチに"みっちー"への羨望は、疑惑に変わり始めた。

というのも、誘いを断り帰っていったみっちーはよく近所の年下の子供ら五、六人と遊んでいた。
何故か?
そこでは彼がリーダーであり、そこは彼のが"一番目立って"いて、彼の意志が優先される"グループ"だった。
…と言うのも、みっちーは俺より運動が苦手であり、誘われたグループでサッカーをしても活躍できる"目"など限りなく低い。
彼は"覚悟"を持っていたのではなく、ただ己の目立つ"場所"に"逃げていた"だけでは?
みっちーだけが、必ず勝てる、必ず目立てる、彼だけの"王国"だ。
彼は"嫌なら現実"から逃げていただけでは?
運動が嫌いで苦手な彼は、ただそれを拒否して、"ライバル"のいない自身の都合が良いグループのみと付き合っていたのではないか?

そんな風に幼馴染の行動を振り替えると、彼は酷く"格好悪い"ヤツに思えたが、さらによく考えてみたら、そんなヤツは世の中にいっぱいいたし、俺自身もそんな人間だと思う。

俺はこのような"自分が優位に立てる少人数グループにいたがり、そこで威張る人を『小さな王様』と呼んでいる。
大きな場所では目立たないが、少人数のグループでは威張る人。
そして、一旦そのグループに"入る"とその"支配下"の人間の行動を制約したがる"王様"。
器が小さく、一人で行動する覚悟と勇気がなく、常に自身の近くに支配下の人間を置いておきたい"王様"。
支配下の人間の"裏切り"を絶対に許さない"王様"。

高校、大学、そして社会人。
そんな"王様"達を嫌と言うほど見てきた。
…と言う俺も、そんな王様だった頃がある。大学生の頃、学内のクラブに所属し、後輩なんかから持ち上げられ、今思えば、"イイ気になっていた"かもしれない。

ブラック企業で起こる"精神的"な圧迫、人間関係の齟齬、学校の"いじめ"、スクールカースト、ママカーストなどはこれが原因ではないか?

人はこの"小さな王様"が大好きだ。(俺自身も含め)
本心では大人数を支配する王様になりたいが、それは難しく、"責任"がうまれてしまう。(後述)
そこで、小さなグループを組織し、そこの王様に収まれば、とりあえずは"王様"でいられる。人の上にたっていられる。

そんな小さな王様が最も嫌うのが、"仲間"の裏切り、"仲間"からの"ないがしろ"、独立だ。

以前いた会社で、俺は同僚達のグループに所属していた。
そのグループのリーダー的な存在のヤツがなぜか、同じ同僚社員を激しく嫌悪していた。
「アイツはダメだ」
「アイツは汚ない」

しかし、俺はそこまでその同僚社員に悪感情が無かった。
何故、そこまでその"リーダー的なヤツ"が彼(同僚社員)を嫌悪するか、理解し難かった。

だが、今ならわかる。
その同僚社員の態度が、"小さな王様"なリーダー社員には我慢できなかったのだ。
彼(その同僚社員)は、どのグループにも属さず、独立していた。
それがリーダーには気に入らなかったのだ。
小さな王様は"独立"を認めない。自分のグループに加わらない人間が気に入らない。
だから、そのリーダーは彼を嫌っていたのだ。

人は、他人から誉められたい。
人は、他人の上にいたい。
人から崇められたい。

それを満たすのは、自身が常に"勝てる"小さなグループだ。
そこにいれば、自分が傷付くことはなく、グループ内の人間は全てが自分の"支配下"だ。

社会に出ても、いや、出なくても学校や家庭、至るところ、人が集まれば必ず集団ができ、"王様"が生まれる。
学校のいじめ、パワハラの根幹的な原因はこれではないか?
俺も学校、社会で下らないグループ、王様を散々見てきた。(やってきた)

ブラック企業では、この"小さな王様"が自身の権利、願望を振りかざし、言わば"専制"であり、時に"横暴"だ。
小さなグループで己の力を示し、他者を制して、"王様"として振る舞う。
裏切りや自身がないがしろにされると、怒り狂い。"新参者"を嫌い、新参者が自分に何かする事や、グループが壊れる事を恐れる。
そして、グループ内の人間の言動に一喜一憂する。

『ママ友グループ』なんて、まさにこれではないか?

前のブログで、『ブラック企業では、あり得ないノルマを課される』と書いたが、その理由の一つにこの"小さな王様"があると思う。
自分が王様のグループだから、そこにいる"家来"のノルマなど、いくらでも無茶して良いし、自分のグループの成績が悪いなど微塵も許せず、仮にそのノルマをクリアできないなど"裏切り"に違いなく、王様は裏切りを絶対に許さない。
それに、"集団は利益を得るためにある"という大義名分が加わり、余計にブラックになる。

そんな"黒き小さな王様"と馬鹿馬鹿しい争いを避けるにはどうすれば良いのか?

一つは、やはり、そんなバカな奴のいる"組織"は辞めることだ。
王様は自分の"範疇"から外れた人間に興味がない。常に気にしているのは自分の"グループ"内の人間の動向だ。

二つ目は、自分が新たに、"自身が王様"な小さなグループを作るしかない。
派閥争いってヤツだ。
これ自体下らないが、逃げたくないなら、自分も"黒くなる"しかない。


☆"ブラック支配"に続く