鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

無所属少年 ① トウフの怒り

先日、別のブログで、以前に『ハマったゲーム』の話を書いた。
小学生の頃の事を思い出しながら書いた。
そして、改めて思った。

なんと殺伐とした少年期だったのか?

とにかく人に認められたい、人の上に立ちたい、自分だけは『凄い奴』と思われたい。
そんな欺瞞と功名心、自己顕威欲に囚われ続けていた少年期だった。
(恥ずかしい…)

だが、他に思い出した事がある。

小学生の3年生の途中から4年生、5年に上がるまでの期間。俺は特定の"グループ"に入らずに、様々な友人と遊んでいた時期があった。

そう聞くと、まるで寂しい記憶のように思われるかもしれないが、逆である。

その時の気持ちは、実に清々しい気持ちだった。
今も、そう思う。

だから、思うのだ。

『今の俺の状況があるのは、ひょっとして"あの時"の感覚があるからでは?
そして、その感覚が今も、俺の中に生きているからではないか?

会社を解雇された。
病気になった。
…いろんな事があった。
だが、今の俺があるのは、"あの時"に感じた気持ちがあるからでは?

少し、思い出してみようと思った。

きっかけは、"缶蹴り"だった。

小学生低学年の頃、俺の遊び相手は近所の小学生だった。
人生最初の家族以外の"グループ"だ。

そして、何故か、缶蹴りが流行っていた。理由は分からない。
何故か、俺の遊んでいたグループでは、この遊びがブームになっていた。

そしてさらに、俺はこの遊びが"大の苦手"だった。
一度、鬼になると終了までずっと鬼だった。
初めのじゃんけんで負けたら最悪。その日、1日はずっと鬼だった。

次第に俺は「みんな、わざと俺に鬼をやらせてないか?」と疑い出した。

…今から考えたら、ただ俺が鈍いだけなのだが、一度そうした被害妄想に取り付かれると、グループ全体が俺を"嵌めよう嵌めよう"としている気がした。

そして、完全に決裂する日がくる。

あれは、近所の神社で缶蹴りをした時だった。
その神社には俺だけの隠れ場所があった。
社務所の塀に上がり、屋根に。そこから隣の楠に飛び移る。

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かなり危ない隠れ場所だったが、ここに入れば、一度に見つかる事はまず、無い。
そういう確信があった。

俺は隠れた。
ひたすら隠れた。一時間はそこから動かなかったのではなかったか?

すると、あり得ない事が起こった。

鬼役の奴が、逃げている仲間を引き連れて俺を探し始めたのだ。

これを見て、俺が抱いていた疑念は確証に変わった。
隠れていた場所から飛び出し(危ない)、みんなに喰ってかかった。

「何でみんなで俺を探す! ルール違反だ。やっぱり俺を鬼にしたいのか! いじめだ、いじめだ!」

すると、仲間内のリーダー格、"ともサン"(アダ名)が慌てて説明した。

「もうみんな、おまえ以外捕まっんだよ。おまえ、全然、蹴りに来ないじゃん? 帰ったかと思って探しに来たんだよ」

そんな事はこちらの知った事ではない。
缶蹴りという遊びの性質上、鬼はリスクを覚悟で探さないといけない。
隠れて出てこなければ、地獄の果てまで追いかけ来い。

リーダー格の説得にも得心しなかった俺は、この近所のグループと遊ぶのを止めた。

その後、誘われても断るようになった。
他人から強く来られると、引き釣られしまう性質の俺としては、異様な意地である。

だが、意地だけで断っていたのでは無い。
神社での口論の後、それでもトモさんは俺を缶蹴りに誘った。
その時の誘い文句が、「おまえ、"トウフ"で良いよ」だった。

"トウフ"

地域に寄って言い方に差があると思うが、俺たちの中で"トウフ"とは『遊びに参加しているが、いくら捕まっても鬼にならない特別な存在』だった。
遊ぶ中に、女の子や小さな子どもがいた際に採用される"特別枠"。

それを俺に与えるという。

頭に来た。
つまり、俺などそういう"扱い"で良い、というわけだ。
『とにかく鬼をやりたくないんでしょ?』と言われたに等しい。

違う。違うのだ。
鬼になるのが、嫌なんじゃない(嫌だったけど…)

遊ぶ前提として、公平に扱って欲しかった。

当然、俺はこの提案を拒絶した。

…今から思えば、トモさんははリーダーとして、ただ俺に手を差し伸べてくれただけな気もする。
年下のどんくさい俺を"仲間"に繋いでくれなかったのではないか?

だが、当時、小学3年生の俺にはそこまでの思慮がなかった。
ただただ自分が、『被害者だ』、という感情しかなかった。
多少、いじめられやすい傾向にあった俺は、もう近所で遊ぶ気はなかった。

こうして、俺は"近所"というグループから離れる事になった。

寂しくなかったか?

全くであった。
"仲間"は近所にしかいないわけではなかったからだ。