鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

新社会人へ⑫ 大仁田の"世界"

「好きなプロレスラーは誰だ?」と聞かれたら答えに困る。
プロレスラーはみんな好きだし、尊敬している。
強いて上げるなら、小橋、ハンセン、蝶野、桜庭…、やはり高田延彦も外せないかな?

だが、「嫌いなプロレスラーは?」と言われたら、すぐに上げる事ができる。

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"邪道"
大仁田厚である。

俺がプロレスにのめり込み始めた中学生の頃(92年あたり)、大仁田は間違いなく人気レスラーの一人であった。
その頃「知っているプロレスラーは?」も言われてたら、大仁田の名前を出していたくらいだ。

だが、俺はプロレスにハマって行くうちに、大仁田が嫌いになっていく。
その理由は前後に別れている。

前期の方は、大仁田のファイトスタイルが『電流爆破』や『有刺鉄線』を使う"デスマッチ"スタイルダッシュからだ。
「プロレスって八百長なんでしょ?」という侮蔑の言葉にうまく抗弁出来ない俺がすがったのが、格闘技指向("プロレス"なのだが…)のU系団体であり、大仁田の団体"FMW"見せるデスマッチは格闘技から程遠いスタイルだった。
「プロレスはガチ(真剣勝負)だ!」と主張したくても、その存在ある限り『八百長』の"汚名"は拭えない。
(それだけでは無かったが)

しかし、信奉していた(薄々気付いていたが…)Uインターが"プロレス"だと判明してからは、好意的に捉えていた。
デスマッチもまた、プロレスなのだ。
そうすれば、同じ"村の中"の少し変わった人、という位置付けが出来た。


後期の理由は大仁田の"生き方"だ。

大仁田は観客を煽るのが上手い。物凄く上手い。
大仁田の試合後のマイクパフォーマンスは『大仁田劇場』などと呼ばれ、大仁田ファンを熱狂させている。
「オイ!×3 俺は!×3」などと叫び、リングサイドに集まった"信者"に水をぶっかけて煽る。
乗せられた信者は大仁田の言動を狂信的に応援する。

まさに、大仁田"ワールド"だ。
ミュージシャンのライヴに似ている。

そして、そんな大仁田に好意的なレスラーや憧れるレスラーも多い。
長州や蝶野は初めは『イロモノ』と蔑んでいたが、結局は"デスマッチ"で大仁田と対戦してしまった。
プロレスの試合は戦うレスラーが"協力"しあって試合を作る。
互いに納得しなければ、マッチアップ(組み合わせ)されることはない。
長州や蝶野は大仁田をバカにしながら、彼の"プロレスラー"としての力を買っていたのだろう。
蝶野に至っては対戦後、「生き方にとやかく言えねぇよ」と暗に認めるコメントを出して、自身の『チーム2000』に大仁田を参加させてしまった。

もちろん、大仁田と対戦する事や組むことで観客の興奮を煽るのが目的だ。
大仁田にそれだけの価値があり、己の利益になると踏んだからそうしたに違いない。

大仁田は物凄く"プロレス"が上手い。
"邪道"というのが大仁田の"異名"だが、それは従来のプロレスとは違い、電流、有刺鉄線、凶器が入り乱れるプロレスは彼から始まり、新日本にも、全日本にも無かった"新しいプロレス"のスタイルを確立した彼への"尊称"に近い。

独特はムーブ(アクション)。
デスマッチというギミック(舞台装置)。
観客を煽るパフォーマンス(アピール)。

どれをとっても他の追随を許さない独創性に溢れている。
…方向性の違いはあるが、従来のプロレスと違うという点ではU系"プロレス"と似ているか?

大仁田は観客だけでなく、他のレスラーを自身の"ペース"に引きずり込むのが抜群に上手い。
批判していた相手をいつの間にか、デスマッチに引き入れ、大仁田ワールドを展開、認めさせてしまう。

最近では"元"IGFで、さらに猪木イズムの後継者で、MMA(総合格闘技)でも活躍した藤田直之をデスマッチに引きずり込んだ。

凄いプロレスラーだ。
大仁田の師匠(大仁田は全日本プロレス出身)のジャイアント馬場は、彼に「お前は生き方そのものが"プロレス"だな」と言ったらしい。

確かにそうだ。
自民党から参議院選挙に出て、晴れて"政治家"になった大仁田は自民党内でいろんな人間に絡みまくり注目を浴びようとした。
究極の"売名行為"である。
それは大仁田の"プロレス"手法そのものだ。

だが、大仁田の場合は"邪道"という言葉があるように、正規の手法を取らないのが"ウリ"である。
つまり、正攻法や従来のやり方をしないのが大仁田であり、彼のやる一見無茶苦茶な方法がまさに"大仁田ワールド"そのものとして肯定されてしまう。

だから、俺は大仁田が嫌いだ。
メディアで少しでも自分の名前が出たら、そこに絡んで行く。
そして、大仁田ワールドを展開。"美味しい"ところを自分のものにしてしまう。
何でも自分のペースに引きずり込む、あの手法が気に入らない。
自分のペースではない。物事が進まないと器がすまないタイプの人間。
だから、無理矢理に自分の"ワールド"を押し付けてくる。

まるで"当たり屋"ではないか?
究極の"利己主義"だ。
恥ずべき人間だ。
格好悪いと心から思う。

だが、皆、大仁田ワールドに引きずり込まれてしまう。
…きっと大仁田は引きずり込める奴を選んでいるのだ。

最近、"プロレス"界に戻って来た船木(元パンクラス)とデスマッチしたのはショックだったなぁ…。

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大仁田の"ワールド"は自分勝手で、大仁田しか美味しくない"プロレス"だ。

批判があっても、その批判を得意の大仁田"劇場"でうやむやにしてしまう。
"邪道"という言葉で逃げ切ってしまう。
名前を出すだけ損であり、関わりたくない人種である。

大仁田の"ワールド"は、社会でいうところの"ペース"に似ている。

何でも自分のペースに引きずり込むのが上手い人間はたまにいる。

今日こそ叱りつけてやろう、と思っていてもいつの間にか主導権を奪われ、こっちがやられてしまう。
その人間のミスにつけこみ、こちらのペースで作業(仕事)が進んでいるな、と思いきや、いつの間にか主導権を取り返されていたり…。

社会において(組織でも)、ペースを掴む、ペースに引きずり込む事はとても便利で難しい。
そして、一度ペースにハマるとなかなか抜け出せない。
それが大仁田の"狙い"であり、大仁田が大仁田たる"ポイント"なのだろう。

だから、俺は大仁田が大嫌いだ。

人は他人のペースで物事が進んでいく事を嫌う。
常に自分中心のペースで作業などが進むことを望む。
作業自体には変わりはないのだが、何か"やらされている感じ"、"進まされている感じ"がすると、ストレスを感じる。
そこから抜け出すには、その人物に関わらないか、そのペースに乗って"内側"からペースを崩すしかない。

俺もそうだ。俺のいる場所は俺のペースで進んで欲しい。
(かなり無理だが…)

だが、新社会人のアナタが他人を巻き込む"ペース"を出したら、間違いなく嫌われて、排除される。

『生意気だ!』
『威張り腐りやがって』
『自分勝手だ』

罵詈雑言が待っている。

だが、それでも自分のペースで作業がしたいだろう。他人のペースで働いたり、何かするのはイライラするよな。

ならば、今は耐えて実績を積むしかない。誰の目にも分かる実績はアナタの"ペース"が正しかった事を示すものである。

アナタのやり方、スタイルが新しい"方法"と認識されたなら、もう大丈夫。
自分のペースに他人を引きずり込める。

大仁田はこの前、通算7回目の"引退"をした。(無茶苦茶だ)
たぶん、また売名行為であり、近々復帰するだろう。(たぶんプロレスファンの誰もが予想済み)

それも含め、大仁田ワールド、大仁田の"ペース"なのだ。
真似たくないが、自分の価値を上げるには、社会では邪道もまた"正道"である。

でも、大仁田は嫌いだ。