鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

プロレス心理学29 2005年のプロレス回帰

少し困った友人がいる。

普段は物静かで、人当たりも良いのだが、その友人は人物に対する好嫌が激しい。

「アイツ、嫌いだな…」
「…アイツの話、納得できないな」

など、俺からすると些細な理由で仲間を嫌悪するのだ。

それだけでなく、「…なぁ?」とこちらに同意を求めてくる。
一人や二人なら、愛想で同意もするが、それが3、4、5人と増えると、さすがにそいつの人間性を疑いたくなる。

「…別にそんな事ないんじゃない?」

と異論を言えば大変である。

「はぁ? お前はなんでアイツの肩を持つ。アイツはロクでも無い人間なんだぞ。みんな、そう言ってんだぞ!?」(言ってない…)

と、自分に同意しない俺に怒り出し、しまいには、

「アイツから金貰ってんのか?」

と有り得ない疑いをし始めた。
困った友人だった。

何度も書いたが、人間は自由だ。
一つの物事、人間に対して、どんな印象、感想を持とうが自由だ。
自分からしたら、『あんな馬鹿』だが、
他人からしたら、『凄く良い奴』かもしれない。
それは個人の勝手である。
他人からの情報で印象や見方が変わる可能性はあるが、他人から強制されるものではない。

その友人の口振りは、何故か自身が"被害者"であり、(自分のみが阻害されている)と言わんとする気持ちが露骨に見えていた。

何度か俺は、「他人が自分と違う意見を持っても別に良いだろ?」と遠回しに告げたが、友人の考えでは、

『自分一人でも、そう思うのなら、それで良いだろう。むしろ、自分の意思を考慮しないお前らがおかしい』

というような感じだった。

友人は自分の意見、考えが通らない事に苛立ちを覚える気質だった。

(コイツは何でこんな考え方しかできないんだ?)

友人のその態度は、俺が子供の頃から考えている『何故、他人は俺の"自由(勝手)"を許してくれないのか?』という疑問を思い出させた。
(別フォルダ"無所属少年"参照)

そう思っているときに、学んだのが、"自己ユーティリティ"という性質だった。

『他人も自分も自由である。
自由だから、他人を規制して、自分と一緒にしたい』

何をしても良い他人は、必ずしも自分と同じ考えをしない。
だが、自分と同じ考えでないと、自分は孤立し、阻害されてしまう。
自分の考えに賛同しない他人は皆"不可"であり、自分に従うべきだ。
何故なら、自分に従えば皆"幸福"である。
そんな自分に従わないのは、何な"特殊"な理由があるのだ。

また、自分の印象を共有して、自分に賛同してくれる"小さなグループ"を作りたがる。
そこに居れば、自分が傷付くことがないからだ。

"自己ユーティリティ"の高い人間は、そんな風に考えて、行動している。

その友人はまさにそんな奴だった。

(…疲れる奴だな)

そんな事を思いながら、社会を見ると、そんな奴はそこら辺にゴロゴロいた。
いや、"だらけ"とも言えるし、俺自身がそうなのかもしれない。

そんな中、この"自己ユーティリティ"の高い人間の、"特徴"が分かった。

他人に対して敵愾心を抱き、その考えに仲間が賛同しないと怒る。
だが、その敵愾心を抱かせた相手には、決してそれを表さない。

例の友人も俺たちの前では、「あの馬鹿が…」などと罵りながら、本人の前では友好的な表情をして"本心"を隠していた。

気に入らないのならば、関わらないか、直接本人に文句を言えば良いと思うのだが、絶対に言わない。

何故か?

そんな事を考えていた頃、俺はブラック企業を退職した。
時は2000年代前半。
格闘技ブームが到来し、元来はプロレスオタクだった俺が、K-1やらPRIDEに傾斜していった頃だ。

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だが、すぐにそのブームは終わってしまった。

そして、考えてしまった。

『"リアルファイト"(真剣勝負)とは何か?』

リアルファイトはプロレスに比べたら、"つまらなくなる"試合が多い。

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当たり前た。
派手なプロレス技など、リアルファイトのリングでは不可能だ。

地味で、殺伐として、淡々と相手の弱点を狙い、無慈悲に倒す。
それがリアルファイトだ。

それは俺たちが生きる社会でも言えるのでは?
自分の思い通りにならない他人、気に入らない他人や事柄に『あの馬鹿が!』と思うのは"リアル"だ。

しかし、そのリアルをそのまま披露すれば、
『アイツは何てワガママなんだ?』
『自分勝手な奴だ』
『恥ずかしくないのか?』
『他人を受け入れられない器の小さい奴』
…などと批判されてしまう。

だから、自分の意識が一番に尊重され、自分を一番に敬ってくれる"グループ"の中で、『あの馬鹿が!』を披露する。

そうすれば、自分を批判する人間はいないし、自分のその意見は誰より尊重される。

これは"プロレス"ではないだろうか?

『皆、好きな意見を言えば良いよ』なんて言いながら、実は自分の意見を最も重視してほしい。

プロレスの結末は決まっている。
あらかじめ決められた勝敗に向かい、レスラーは闘う"演技"をしている。

『だから、プロレスなんて八百長だ!』と言いたくなるだろうが、そんなアナタも(俺も…)、社会に出たら"プロレス"してはいないか?
誰かの意思を尊重して、生きていないか?
そうすることで"恩恵"を受けていないか?

俺はその時、前田日明を思い出した。

前田日明は物凄く仲間に優しい。
仲間(UWF)の為なら自己犠牲も厭わない素晴らしい心根の持ち主である。
第二次UWFの頃など、彼は自身を"消費"させる事で、団体を興隆させた。

ちなみに、日本格闘技界の礎は前田日明が作った、と俺は思っている。

しかし、前田日明は自分を裏切た(る)者を許さない。

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(猪木、長州とは和解したらしい)

自分の意思に従わない者、自分の考えに違を唱える者を決して許さない。
それは、自分こそが一番正しく、自分に従っていれば良いのに、それをしない者への嫌悪だ。
自分が一番苦労して、一番損な役目をしているのだかや、仲間は皆、自分に従って当然と思っている。

だから、他人が少しでも自分の意思、指示に抗うと「裏切り者!」となる。

思えば、例の友人も仲間には物凄く優しかった。
仲間が好きだったのだろう。


ここまで、"自己ユーティリティの高い"人間の話を長々と書いてきたが、俺が言いたいのは、「自己ユーティリティが高い人間には関わるな」という事では無い。
自己ユーティリティの高い人間は、どこにでもいる。
会社、学校、近所…。
下手したら、アナタがそうかも?

人間は誰とも社会に出たら、誰とも関わらないで生きていくのはほぼ不可能だ。

だから、自己ユーティリティが高い人間とどう付き合って行くのかを考えていかないといけない。

その"ヒント"を書いてきたつもりだ。

彼らは『本音』(リアル)を抱えながら、他人には『建前』(プロレス)を強いる。

他人の言うことなど聞き入れたくはないが、それをおおっぴらには言えない。

ならば、そこを突けば良い。

本音、実力(リアルファイト)を撒き散らし、挑んで来たら、グループ(プロレス)でハメてしまえ。
揚げ足を取りまくれ。

「あれ? この前○○っていってませんでしたか?」
「この話、○○さんは知っているんで?」
「立場上、○○とは言えないのでは?」

そう言ってやれ。

逆に、"小さいグループ"でプロレスを仕掛けてきたら、"リアル"で返してやれ!

「そんな事言えば、どうなるのか分かってんのか?」
「うるせぇ、馬鹿野郎!」
「やれんのか?てめぇ!」

そう言ってやれ。

PRIDEの末期。
俺は桜庭和志が大好きだった。

桜庭の『プロレスラーは本当に強いんです!』という言葉は、俺のように、既存のプロレス➡UWF(インター)➡総合格闘技と観戦の対象を変えてきた人間にとって、溜飲の下がる言葉だった。

プロレスラーは強い。
それは、プロレスが強いと言うことであり、プロレスの強さ=格闘技の強さ、となる。

本当は違うのだが、それを総合格闘技はリングでプロレスラーの桜庭が言うことに意義がある。

しかし、桜庭はPRIDEのリングでは、"プロレスらしい"技を繰り出しても、プロレス技を使って勝っていたわけではない。

総合には総合の、
プロレスにはプロレスの戦い方をしていた。
それは仕方の無い事なのだが、プロレスオタクの俺からしたら、

グレイシーをバックドロップで投げてくれないかな?』とか、『シウバにSTFしてくれないかな?』

という願望があった。

…プロレス技はレスラー同士の"協力"で出せるのであり、リアルファイトのリングで繰り出す事はかなり難しい。
(ブラジリアン柔術パワーボムを仕掛けるのは非常に"間違い"とされている。三角絞めを食らいやすくなる)

桜庭の言った『プロレスラーは強い』とは、"プロレス"という競技が『他の格闘技に比べて優れている』と言うことでは無く、『プロレスラーは総合格闘技(MMA)という競技においても勝てる存在である』と言うことではないか?

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そう気付いた辺りから、俺は次第にプロレスに"回帰"していった。
2005、6年の頃だ。

『プロレスは強い』

これは、社会においては、
『自分の為の小さなグループを作った者は強い』と同じだ。

だから、リアルに強い奴は"プロレス"に引き釣り込んでしまえ。

そして、"プロレス"ばかりを仕掛けてくる奴は逆に"リアルファイト"をしてやれ。

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何をされるか分からない真剣勝負は、勝敗が分かっている"プロレス"ばかりをしていた奴には恐怖でしかない。

ビビらせてやれ!
拳の痛さと意識を失わせる絞め技、サミング(目潰し)をされる恐怖は、人を萎縮させるに違いない。

それが社会と言う"リング"だ。

常にはプロレスをして、

プロレスには、リアルを。
リアルには、プロレスを。

そうして、リングで生き延びるんだ。