鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

プロレス心理学54 破壊者は辛いよ

貴乃花親方の"引退"騒動が毎日報道。
大きな騒動になっている。

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いろいろな話を総合してみると、八年前2010年の"貴の乱"がポイントではないか?

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理事長に出て、二所ノ関一門を抜け、『貴乃花一門』を立ち上げた(2014年)のが一連の問題の"出発点"ではないか?
相撲部屋は、二所ノ関、伊勢ヶ浜、時津風佐渡ヶ嶽、出羽海の五つの『一門』に属しているが、そこに新たに自分の『一門』(グループ)を立ち上げたのた。

江戸時代、この五つの一門がそれぞれに別れ、相撲興行が行われていたが、それが"合併"(明治以降)して、今の大相撲ができたのだ。

この五つの『一門』は相撲界の"しきたり"、"ルール"であった。
(特に条例化はしていない)

それを貴乃花親方が"破壊"したのだ。

旧来の親方たちからしたら、面白い話ではない。
今回の引退報道に「あの小生意気な若造、ようやく辞めるのかっ」と心の内で喝采を上げてた親方もいるはずだ。

…だが、この件だけを見たら、貴乃花親方が100%正しい。

何故なら、相撲を観ている我々からしたら、"一門"など微塵も関係ないからだ。別に一門だろうが、グループだろうが、力士がぶつかり合う相撲がみたいのだ。
一門などを意識して相撲を見ていない。(相撲好きな"好角家"などは別として…)
どうでも良いのだ。

貴乃花親方が新たに一門を持とうが、どうが、我々観客には関係がない。
『一門に入ってないといけない』などという"不可解"な条例を作った相撲協会のやり方には疑問がつく。

『圧力などしていない』というが、そうだろうか?
既存の体制、権利を守りたいだけでは?
(それが一概に"悪い"とは言えないが…)

この引退報道や貴乃花親方を、その既存の親方たちから見たらどうだろうか?

一門は大相撲の"伝統"であり、"しきたり"であり、"格式"である。
それを大事にする事で大相撲が守られていて、ひょっとして既得権益なんかもあったのかも?
貴乃花親方は、それを否定する"破壊者"であり、古くから親方たちしたら、「生意気な若造が、何を粋がってやがるんだ💢💢💨」と腹が立っただろう。

しかし、貴乃花親方からすれば、
伝統=古いシガラミ。
しきたり=わけのわからん縛り
格式=革新を拒む悪しき風習

貴乃花親方は元横綱として、大相撲界の現状に大きな"危機意識"を持っていたのではないか?
だから、新しい提案を続けるのだ。

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『一門などの古いシガラミに縛られている相撲界に明日は無い』と思っているのでは?

しかも、貴乃花親方の"主張"は一般社会からしたら、正当性があり、間違っていない。
だから、親方らは表立って文句は言えないのだ。

貴乃花親方のsocial relevance assessment(社会的適合評価)は合っている。

しかし、大相撲界や相撲協会のsocial relevance assessmentでは"不適合"である。

貴乃花親方にすれば、全ては大好きな相撲の為であり、相撲の事しか考えていない。

なのに、『全ての親方(年寄り)は五つの一門もいずれかに所属しなければならない』などと言うルールが作られた。

貴乃花親方からすれば、まるで自分を"狙い撃ち"したようなルール。

協会や他の親方らからすれば、今までは"暗黙の掟"だったのを、"小生意気な若造"が粋がるから"明文化"しただけ、というわけかもしれない。

こういう"革新的な破壊者"を上手く内包し、"手綱"を効かせるのが"大人"であり、簡単に排除するのはいかにも大人げない。
単なる"権力闘争"であり、"既得権益"にしがみつくセコい人間に映る。

…実際そうなんだろうな。

しかし、これは貴乃花親方にも問題が無いだろうか?

どうも貴乃花親方自身は周囲に"根回し"や"連絡"をせず、独断専行で物事を決めてしまうらしい。

これはいけない。

自分の"部屋"なら良いが、組織(会社)となればダメだ。
己が何かをしたいのなら、その意思を伝え、自分の"賛同者"を作り、しっかりと連絡し、自分の行動をその組織内での"正当性"を確定させるべきだ。

おそらく、貴乃花親方はそうした根回しや連絡ができない性質の人間なのだろう。

だから貴乃花親方に悪気は無い。

何故なら、

『自分が決めた事が全てであり、自分の行動言動に間違いはなく、自分が一番正しく、自分に従っていたら過ちはない。だから、"いきなり"だろうが、"連絡"が無かろうが大した事は無い』

と思っているからだ。

もっと言えば、貴乃花親方自身は破壊者という認識は無く、"改革者"のつもりだろう。
そして、その改革がうまくいかなかったから『引退』。

"破壊者"は辛い。
こうした周囲のギャップとも戦わないと、承知できないのだ。

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これは破壊王…・橋本真也

ワイドショーなどでは、『この引退届も何かの"策"か?』と囃し立ているが、俺は貴乃花親方は本当に引退するつもりだと睨んでいる。

何故なら、根回しや連絡ができない人間は、誰かに"お願い"したり、頼るなどという"無様"な姿を見せるはずがないからだ。

そんな事をするくらいなら、"自身の存在を無にする"と簡単に決めてしまう。
周囲に相談したりしてどうにかしようなどという気持ちにならないのだ。
自分の"意向"が通じないのであれば、すぐに諦めてしまう。

俺はこういう人間を"連絡できない症候群"と呼んでいる。(また別で書く)


プロレスでは"根回し"は常である。

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(映画:"レスラー")

プロレスにはシナリオ(ブック)があり、それに従いレスラーは試合を演じ、それにより観客を興奮させる。

また、レスラーには"格"があり、それは"人気"により決まる。
肉体的な優劣や、格闘技術では決まらない。

貴乃花親方が現役時代いくら強くても、相撲協会という"社会"では通じないように、リアルな強さを誇っていても、プロレスのリングでは通じない。

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根回しや連絡が必要なように、プロレスには"キャラクター"や"パフォーマンス"がいる。

断っておくが、貴乃花親方の考えや"相撲界を盛り上げたい"という気持ちは正しい。
間違っていない。
そうしなければ、古い慣習に縛られている相撲界はどこかで破綻が来るだろう(もう来ている?)

しかし、人に根回し、連絡せずに行っては誰も付いていかない。

マチュアの実力がプロレスのリングではあまり意味が無いのと同じように、"元横綱"、"人気力士"というだけでは人は付いて来ない。

俺にも最近似たような事があった。

何の連絡も無く、いきなり通告が来て、相当頭に来た。
通告した本人に悪気は無く、連絡の必要性も感じではいなかった。

その人も"連絡できない症候群"なのだろう。

貴乃花親方はどうしたら良いのか。
誰もが、引退せず、協会内に残る事を望んでいるのだろう。

確かにこのまま引退するのは、何か釈然としない。

しかし。このまま相撲協会内にいたらどうなるのか?
協会の決定には従わず、"革新"を主張し、自分の意見を押し通そうとする。

協会内の親方らは、たまらないだろうな。

そこを飲み込むしかないのだが、『引退』を口にした貴乃花親方は絶対に引かないだろう。

連絡ができない彼は、自分の信念を曲げられないのだ。