もう数ヵ月前の話だが、長州力が引退した。
それに対し、様々な関連本が出された。
その中で長州力というレスラーを多人数の人間の証言から分析している本があった。
同僚レスラーだけでなく、新日の元ブッカーやスタッフなどから証言を取っている。
その中で、元週刊プロレス編集長のターザン山本!が、長州の傾向として、
『長州は自分と癒着しない奴を嫌うんだよ』
と言った。
長州力を表すのに、極めて分かりやすい表現だと思う。
長州は自分と“癒着”しないとキレる。
癒着という言葉は汚く聞こえるが、別の言い方と言えば、『自分と利害関係を一緒にする事』となる。
つまり、自分(長州)を常に念頭に置き、遠慮し、尊敬し、“忖度”しないと怒る。
事実、長州と“距離”があった橋本、西村などは冷遇された。
“有プロ”でも少し語られていたが、新日Uターン後の長州は現場監督に就任。猪木が政治家になっていく過程で、徐々に“猪木”色を抜いて行き、新日を自分の“テリトリー(領域)”に収めた。
だから、長州は自らに従わない、靡かない人間を嫌う。徹底的に嫌う。
ターザン山本(!)が編集長をしていた週刊プロレスを取材拒否にしたのは、この為である。
当時の長州の描いたブック(台本)に反し、その裏を取材し、書き続ける同誌の体制が気に入らなかったのである。
癒着という表現を変えたら、『利害関係の一致』、『昵懇』、『仲良し』とでも言うのか?
長州は自分と同じ利害関係を結ばないと、その相手を信用しない。
以前、書いたが、長州力は自分の妻との“初デート”にマネージャーを同席させ、受け答えをそのマネージャー越しに行わせた“腰抜”である。
己と“癒着”しない人間との接触が怖くてしかないのである。
…と、ここまで俺は長州力を“臆病者”と散々コキおろしてきた。
では、長州力が『嫌いか?』と言われたら、そんな事はない。
長州力はプロレスの世界に置いて、必ず必要な“キーバーソン”であり、間違いなく一時はプロレス界の“ど真ん中”にいた。
長州ほどプロレスラーらしい、プロレスラーはいない。プロレスーとは、長州力ほどの人物である。
『キレちゃいないよ』
『アイツが死んだら、…糞、ぶっかけやる!』
『またぐなよ』
『天下を取り損ねた男』
…など、“名言”に暇がない。
(『糞、ぶっかけ…』は俺もよくつかうなぁ)
皆の近くにもいないだろうか?
自分と同じ“グループ”に加わらないとキレる人間。
そうしないと、対等に話ができないヤツ…。
みな、“臆病者”であり、自分の力では状況を変えられない人間である。
だから、長州は臆病者だ。
癒着というアングル(構図)に他人を組み込めないと、何も出来ない。
だから、「糞、ぶっかけてやる!」なのである。
だから、橋本真也は引退させられたのである。
しかし、長州を「愚かだ」と罵るのは少し違う。
あなたも“臆病者”ではないですか?
他人に対し、自分と利害関係にならないと“関係”を構築出来ない。
自分の“仲間”にならないと、話せない。
…そんなヤツは、長州を笑えない。
“またげない”人間でしかないのだ。癒着というアングル(構図)でしか生きていけない“臆病者”であり、我々はすべからく、“臆病者”である。
他人が怖い。
自分に従わない人間が怖い。
他人は自分に従うべきである。
そう思うから、自分に“組み入れ”て来ない他人にキレるのである。
長州のアングルは所詮、『自分に従えよ』という、子供染みた“怒り”であり、『俺はお前の噛ませ犬じゃない!』は『…だから、お前は俺の噛ませ犬になれよ』でしかない。
1996年、新日の真夏の最強決定戦、G1で長州が優勝した。
当時、長州は明らかに“一線”から退き、マッチメーカーや、プロデューサーとなっていた。
なのに、自身を優勝させるブック(台本)に俺は覚めていた。
(長州、ここまで自分優先のプロレスを見せるのか?)
俺の気持ちが新日から離れていくきっかけになった。(10・9でUWFからも離れたが…)
プロレスはショー👯♀️である。
プロレスの勝敗は実力ではなく、観客の興奮を鑑みての“勝敗”でしかない。
だから、プロレスは癒着を優先する。
誰が、誰と“癒着”しているからが重要であり、それがプロレスの結果に繋がる。
長州は、自分に靡かない橋本が大嫌いだったが、世間は橋本に“最強”を見ていた。
長州はG1では橋本を勝たせず、IWGP王者として橋本を持ち上げた。
癒着しない橋本に最大限の“譲歩”をしたのだ。
長州は相当おもしろくなかっただろう。
それが後の“ゼロワン”に繋がったのだが…。
癒着してくれる人間のみを相手にしていた長州は、次第に時代から取り残される。
新日の現場監督を取り上げられ、居場所のなくなった長州は、『WJプロレス』を立ち上げるが、大失敗。
結局、新日に戻る。
癒着でしか、生きていけない長州。
癒着でしか、他人と関われない長州。
そんか長州は、我々とよく似ていないだろうか?