ピザ屋への宅配🍕をしていた時。
ほぼ毎回宅配の仕事をしていたが、まれに宅配以外の仕事をする事があった。
それはチラシ配布や外観の掃除だ。
基本、日雇い派遣の宅配ドライバーは忙しい時にしか呼ばれないので、基本デリバリーしかしないが、たまにこうした時があった。
ある南区の店舗に派遣された時に、宅配注文が無く、そこの店長から「すいませんね日雇いさん。外壁の汚れ、取ってくれません?」と依頼された。
それは店の壁に張られたポスター跡などを洗剤とヘラで擦りとる掃除だった。
時期は年末のとても寒い日の夕方だった💦
内心、(…外は寒いな)と思って嫌だったが、日雇いの俺に拒否権はない。
作業をしようとすると、一緒に働いていたバイトが「…いやー、災難っすねえ。でも、この店、よく社長らが見に来るんで、壁汚れているとうるさいんすよー」と俺に同情した。
つまり、店長から“厄介事”を押し付けられたのだ。よくある華だ。
俺は苦笑しながら、“壁洗い”をした。
この派遣先のピサ屋全てに言えるのだが、とにかく“人使いが荒い”、そして“常に人手不足”だ。
ま、だから俺みたいな日雇いが来ているのだし、前も書いたが、求人誌のバイトでここの求人広告を作っていたから、常にバイトを募集しているのは、知っていた。
俺は店の壁のポスター跡を擦り、スポンジで磨くことにした。
なんとも微妙な気持ちだった。
金がないから、こうして日雇いで働いている。
同時に、そのために寒風の中、壁にこびりついたポスター跡を擦りまくっている。
これは仕方ないのだが、どうしても「何で俺が?」と思ってしまう。
「何故、ここってこんなに人手不足なのか?」
それは人がいないからだ。
働く人(バイト)がいないから、それを“カバー”しているのが、俺たち日雇い派遣、なのだ。
派遣は、会社や社会の“調整弁”…。
日雇い派遣はそう言われてしまう。
その理由がよく分かるようだった。
寒風の夕方🌆になった頃、例の社長が夫婦で店に来た。
壁のポスター跡を剥がしている俺に、「大変ね。頑張って!」と声を掛けた。それは社長の奥さんで専務(?)だった。
その声に聞き覚えがあった。
いつも求人の依頼の電話でやり取りする声だった。
まさか、求人誌で応対している人間が自分の店舗の壁を擦っているとは思わないだろう。
もちろん俺は自分の“正体”を明かしていない(①で書いたクレーム担当さん以外には…)
そして、このピザ屋🍕グループの人手不足の原因が分かった気がした。
宅配ピザ屋の人手需要はかなり局所的だ。
週末の昼、夕方などの所謂“『コアタイム』だけ”が必要だ。それ以外は基本既存のバイトで“回せる”。
だから、“必要な時”だけ“人手”が欲しい。
その結果が、俺達日雇いへの依頼となる。
このピザ屋グループは、元々既存バイトの数を相当“絞って”いるのだ。
そして、バイトも人間だ。コアタイム(金土日)には休みたい。若者なら、他に遊びたいのだろう。俺も若い頃は週末は遊んで🍻いた。
で、忙しい時に人手が不足する。
忙しい時に“出られない”人間は採用しない。
ますます、人手が減る。(そして、日雇いは増える)
俺達のような日雇いをバイトとして雇う手もあろうが、出勤が金土日のみ、では働けない。いやだ。
で、また人手不足。
この繰り返しなのではないか?
いや、“デリバリー業界”は基本、この繰り返しの中で人員を遣り繰りしているのだ。だから、俺のいた求人誌などに広告を出してくれる。
この社長らが、既存のバイト応募にもっと高額の時給を出すか、人件費を惜しまず、正社員を増やせば良いのだ。
だが、そんな器量はないだろう。
壁をこする日雇いに「頑張って!」という人間に人員の思い切った補充を考える頭があるはずがない。
ここはこんな風にやっていくんだな、と心から思えた。
ま、だから日雇いの俺が働けて、僅かながらの賃金💴を得ているのだから、それはそれで良いのだが。
妙に経営者の気質が見えた時だった。
こんな事をその後、俺は嫌というほど見る事になる…。