まず、レスリング技術(あくまでも試合を湧かせる為)はあるが、フック(関節技)ができない、"ジャーニーマン"。
彼等は次第にレスリングから離れ、そのムーヴやギミックで観客を煽るようになっていって、現在のアメリカンプロレスの"源流"になった。
ジャーニーマンから進化したその後のレスラーに、で紹介した『バディ・ロジャース』がいる。
次に、レスリング技術(あくまでも試合を湧かせる為)はできないが、フック(関節技)を決める事ができる、"シューター"。
この代表的なタイプに、猪木の師匠でもある『カール・ゴッチ』がいる。
たまにゴッチか『プロレスの神様』と呼ばれる事があるが、正しくは"シュートの神様"である。
"シュート"とは、"真剣勝負"を意味するプロレス用語だ。
何故、黎明期のプロレスにシューターが必要だったのか?
コンテストで負けが決まったレスラーが、本番"プロレス"興行で決まりを覆そうとしたり、プロレスラーに真剣勝負を挑んで来る奴が現れた場合、そんな奴にフック(関節技)を決めて"制裁"する為た。
※彼等は"ポリスマン"と呼ばれていた。
だから、シューターはショーアップされたアメリカンプロレスを批判する。
「技術も無いのに、アピールばかりしている」
「本当に強いのは俺達だ」
しかし、ここで何度も書いたが、プロレスラーの"強さ"はレスリング技術や真剣勝負の強さでは無い。
『観客を興奮(ヒート)させた』レスラーが強いのだ。
如何にシュートが強かろうが意味はない。
単なる嫉妬でしかない。
そして、その両方を出来る"フッカー"。
テーズは自身を、その"フッカー"だと言う。
観客を湧かせるレスリングもできて、シュートを仕掛けてきたら、素早くフックを決める事ができる。
だから、テーズは最強であり、どのプロレス興行にも喚ばれ、観客を湧かせる事ができた。
なので、テーズは7年近くもNWAの王者であった。
まさに"最強のプロレスラー"だ。
現在で言えば、桜庭和志がそれにあたるかも?
桜庭は97年のUFCジャパン(UFC非公認)で優勝した桜庭は、マイクアピールで
「プロレスラーは本当に強いんです!」
と、叫んだ。
これは、プロレスにとって非常に重大な出来事だった。
『プロレスラーは、あくまで"プロレス"の中だけで"強い"のであり、"プロレス"という枠組みを離れたら"弱い"。
何故なら、プロレスは八百長であり、プロレスラーは決められた勝負を演じているに過ぎない』
プロレスファンはそういう世間の目で見られていた。
だが、UFCジャパントーナメントという"シュート"(真剣勝負)で優勝した桜庭が自身を「プロレスラー」と言った事だ。
桜庭は強い。
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プロレスの試合でも、シュート(真剣勝負)でも強い。
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桜庭はプロレスラー。
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だから、プロレスは強い。
こういう理論が成り立つ(はずだ)。
桜庭が勝てば勝つほど、活躍するほど、プロレスファンは"最強"を夢見ていられる。
(最近の桜庭はプロレスの方に比重をかけているが…)
それは80年代の猪木の『異種格闘技戦』と同じだ。
普段はプロレスをしながら、時に異種格闘技でプロレスラー以外と"シュート"(真剣勝負じゃない試合もあったが…)を行う猪木は、世間に『プロレスは最強』だと証明し続けてていたのだ。
それにファンや、世の中は興奮した。
猪木に最強を夢見て、猪木の戦いに喝采を送った。
猪木最強=プロレス最強、だと思いたかったのだ。
会社や組織に入ろうとした時、人は自身独自の"能力(実力)"をアピールする。
「私は有能です」
「私はこんな事ができます」
「こんな資格持っています」
そんな風に自分の"実力"を示す。
実力で戦いだかる。
それが正しいと思う。だから、"シュート"(真剣勝負)を仕掛けたがる。
だが、世の中に出たら分かる。
社会には大した実力も内のに威張っている奴が山ほどいる。
資格や実力も無いのに、人柄や人間関係だけで上に立っている奴。
上に媚を売っているだけで威張り散らす奴。
実力がある貴方から見たら、卑下したくなる人間だが、
それが社会だ。
"実力"(シュート"の技術)だけが評価されるのではないのだ。
言い換えたら、実力が無くても社会では上に立ってしまう。
また、人間関係や実力以外の力が評価される。
ゴッチらシューターが、「実力が無い」と言いたくなるのは分かる。
確かな技術や、能力は正当に評価させるべきだ。
『自分は他者に役立つ力がある』のなら、それになりの価値を見いだされ、待遇を与えられるはずだ。
それは大きく間違っている。
実力があるか、否かは社会人の"全て"では無い。
ロジャースのようにレスリング技術以外で高い評価を得て、それが"ギャラ"(給料)に反映する場合がほとんどだ。
もし、貴方の実力がかなり高い場合、社会の周りの人間が"劣って"見える。
だが、評価はその劣っている人間の方が高い。
そこに耐えられるか?
逆に、実力が無かったらどうか?
(俺なんてこのタイプだな…)
"ジャーニーマン"やロジャースのようなタイプの"レスラー"を目指せば良い。
"フッカー"を目指すのが一番だ。
実力がありながら、人間関係も器用にこなす。
そんな社会人が最高なのだ。
だが、そんな奴はなかなかいないし、成れない。
だから、社会人になったら、まずは"フッカー"を目指すべきだ。
そしてそれが無理なら、自分を分析するべきだ。
"ジャーニーマン"になるべきか、"シューター"になるべきか。
そして、ジャーニーマンになるなら、実力以外を伸ばす事に専念する。
誰かにすがるのもありだ。媚を売るのも良いだろう。
そんな自分を卑下してはいけない。"社会人"なのだから。
シューターになら、実力以外で評価されることに嫉妬してはいけない。
"社会人"なのだから。