この"無所属"だった頃、俺が仲良くする友達には共通点があった。
それは、
性格が穏やかで、自己主張が少ないタイプ。
人当たりが良く、愛想が良い。
そんな人間ばかりを"選んで"付き合っていた気がする。
"自分"を威張り、俺を"従わせようとする"奴が好きになれなくなっていた。
俺に対して、執着せず、気の優しい友達。
そんな友達が良かったのだ。
だが、人間は一皮剥いたらわからない。
それをまざまざと見せ付けられた友達がいた。
それが"川ちゃん"(アダ名)だ。
別ブログで少し書いたが、川ちゃんはドラえもんが好きで、いつもニコニコ笑っていて、穏やかで、優しい性格だった。
表向きは…。
川ちゃんは、俺とウマも合ったのか、俺と同じような考えだったのか、よく遊んだ。
彼とは中学まで一緒であり、高校は違ったが、中学卒業後も度々会っていた。
川ちゃんと遊ぶ事は楽しかった。
そんな川ちゃんは、"本当の顔"をちらちらと見せていた。
あれは、小4の時。
川ちゃんを含めて数人と遊んだ時の事。
"みっちー"(アダ名)が「缶けりをしよう」と言い出した。
"缶けり"に嫌な記憶( 砲靴ない俺は、その事を言って、参加を嫌がった。
そうすると、みっちーは、
「そんなら、"サバイバル方式"でやろうや」
と言い出した。
"サバイバル方式"とは、みっちーがいうには…。
まず、普通に『かくれんぼ』として開始。
逃げる範囲に制限はない。
そして、鬼が逃げ手を見つけたら、そこらにある『缶』を見つけ出し、囲まれた位置(円形では無くても可…)で「〇〇、見つけたポコペン!」と言えば、鬼の勝ち。
逆に逃げ手が鬼より早く、『〇〇(鬼の名前)、ポコペン!』と言えば、セーフ。
鬼は10秒間動きを停止する。
…という、今から考えたら、恐ろしく鬼に有利なルールだった。
(みっちーはこれを「こち亀で見た」と、言っていた)
「…それなら」と、何故か納得して、俺はやることにした。
最初の鬼は川ちゃんの弟だった。
開始30分して、その弟と川ちゃんが揉めだした。
"川ちゃん弟"が川ちゃんを見つけて、いち早く『ポコペン』を宣言したが、その際に弟が使用した『缶』が、缶としての形状が無いほどベコベコの缶だった。
川ちゃんはそれを「缶では無い。無効だ!」と主張していた。
確かにその缶は車に踏まれたのか、ぺしゃんこで、見た目ギリギリの缶だった。
皆が集まり、協議した。
旗色は川ちゃんが不利であった。確かに缶としてはギリギリだったが、立たせる事が出来たからだ。
その空気を感じてか、川ちゃんはブチ切れ出しだ。
そして、その缶を持って近くの小屋に投げ付けた。
俺たちは川ちゃんを止めた。
「やー。川ちゃん、止めなよ。誰か出てくるよー」
すると、川ちゃんは、
「これが家か! 物置だろ!」
と言い放った。
だが、それは俺には家に見えた。
だが、川ちゃんは「物置」と言って聞かない。
すると、近くで農作業していたオバさんが、
「アンタら! 何やってんの! そこら人が住んでるのよ!」
と怒って来た。
俺たちは謝るしかなかった。
やはり、民家だったのだ。
だが、川ちゃんは納得しなかった。
その場を離れた後も、俺たちに「あれは、物置だろ!」と言っていた。
さらに、川ちゃんは執拗だった。
その数日間、川ちゃんはその『小屋』が物置か、民家かを両親、近所に尋ねたらしく、俺たちに「やっぱり、あれは物置だ!」と告げて来た。
こちらからしたら、その『小屋』が、民家だろうが、物置だろうが、もうどうでも良かったのだが、川ちゃんは何故か、その件にこだわっていた。
自尊心?
意地?
川ちゃんには、柔和な笑顔の裏に、誰かに傷つけられたくないプライドと、信念があった。
★続く