鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

プロレス心理学100 炎🔥と雷⚡のカリスマ

俺は、大仁田厚が嫌いだ。 

 

大仁田は相手を自分のペースに引きずり込むのが得意だ。

どんなに強い相手も、どんなに攻撃を受けやられようと、大仁田は自分のペースに巻き込んでしまう。

 

“大仁田劇場”という言葉があるように、大仁田は相手ならず、周囲も巻き込み、自分の“世界”に引きずり込む。


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大仁田のプロレスに勝敗は関係ないのだ。

リングで大仁田厚と相対した時点で、大仁田の勝ちだ。


俺が大仁田が嫌いになったのは高校生の頃。

UWF(Uインター)に惹き付けられていた頃だ。

大仁田の発言を聞いた。


「FMW(大仁田の団体)には、UWFが邪魔なんじゃ! UWFのレスラーよ、ワシと闘えや!」

 

俺は、(…コイツ、馬鹿か、闘うわけないじゃん?)と思った。


『プロレスは八百長』『プロレスはショー👯‍♀️』という“侮蔑”を嫌っていた俺は、U系団体の真剣勝負の格闘技(っぽいプロレス)に惹かれていた。

その中で、大仁田厚のFMWは『電流爆破』や『バリケード』を謳った“デスマッチ”プロレス団体だった。

大仁田とFMWの存在は、それだけで『プロレスは八百長』『プロレスはショー👯‍♂️』を示唆していた。


それが我慢ならなかった。こんな奴(大仁田厚)がいるから、プロレスはいつまで経っても“ショー”と思われるのだ、と思っていた。


しかも、そのU系団体に喧嘩を売るなど…。

「頭がおかしいのか?」としか思えなかった。


つまり、大仁田がUWF系団体(Uインターなど)のレスラーと闘うには、大仁田からFMWのデスマッチ・プロレスを「やって下さい」と頭を下げないといけない。


それが嫌なら、大仁田がU系団体の“格闘技”色の強いリングに上がらければならない。


大仁田が“UWFルール”のリングに上がるわけが無い。

涙のカリスマなどと言われているが、俺から見たら、“いつもランニングの小肥りのオジサン”だ。

格闘技の経験があるとは思えない。打撃も“マウントポジション”や“サブミッション”など知らないはずだ。

おそらく、Uインターの若手に5分と持たずに締め上げられるだろう。

そんな場所に「涙のカリスマ💧」が上がるわけがない。

それなのにUWFを挑発するなど、愚か者としか思えなかった。

 

…今から思えば、“愚か者”は俺である。


そもそもUWFはプロレスである。真剣勝負っぽく見えたプロレスだ。(うすうす気付いていたが…)

U系団体もパンクラス以外は、皆“プロレス団体”である。(長州の言い方なら『こっち側』…)


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もし、U系団体の誰かが大仁田とデスマッチをしたならば、それなりの試合をするだろう。


プロレスだから。


俺は、自分の選んだUWFを『真剣勝負のプロレス団体』(?)であると思いたかったのだ。

Uインターもプロレスでしかなかったが、それは“崇高な”真剣勝負の格闘技でなければならない。

大仁田厚のFMWなどという“ゴリゴリ”のプロレスが勝てるはずが無いと、思いたかった。


…かなり恥ずかしい話だ。

UWF(Uインター)もまた“ゴリゴリ”のプロレス団体なのに。

愚か者は俺である。


だが、それでも大仁田がU系団体のレスラーと“U系のリング”で闘う事は100%無いだろう。

(最近、船木が大仁田と闘ったが、あれは大仁田の“爆破王”のリング…)


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大仁田は絶対に自分の“テリトリー”(領域)から出ては闘わない。必ず自分の領域で闘う。

“電流爆破”という領域でしかプロレスをしない。

 

何故なら、大仁田厚は日本におけるデスマッチ・プロレスのイオニアである。

大仁田が作った『電流爆破~』のプロレスはそれまでのプロレスの概念や見方を変えてしまった。

新しいプロレスジャンルを作った、と言える。


肉体と肉体のぶっかり合い。

見たことも無い鮮やかな技。

正義(ベビーフェイス)と悪役(ヒール)の抗争。


そこに『電流爆破デスマッチ』という、新たなジャンルを創立させたのだ。(デスマッチ自体は昔からあったが…)


血🚑が飛び散り、派手な爆発🔥💣が鳴り響く…。

そんなプロレスを大仁田が作ったのだ。

つまり、大仁田からしたら、プロレスの勝敗などあまり関係ない。

闘いたい相手が、電流爆破のリングに上がり、自分と相対した時点で、大仁田の“勝ち”だ。

後は、有刺鉄線と爆破でボロボロになり、泣きながら「ファイヤー!🔥」と叫び、口に含んだ水を吹き掛けたら、観客は狂喜する。


まさにカリスマ。

まさに“信者”。


そして、大仁田厚のプロレスは究極の“炎上”商法🔥だ。

電流爆破⚡で観客を寄せ集め、「ファイヤー!」🔥で熱狂に引きずり込む“宗教”だ。

そして、他者を批判し、自身を炎上🔥させて、その相手をまた引きずり込むのだ。


大仁田得意の“戦法”だ。


これを大仁田は議員の時もやった。


自民党から参議院選挙に出た大仁田は、運良く議員になれた。小泉政権の頃だ。


で大仁田議員は、当時何かと批判されていた杉村大蔵“教育係”に名乗り出た。

これに対し、当時の自民党の幹事長、武部氏が「杉村君をネタに“便乗”するなよ」と拒否した。


もう大仁田の“思った通り”の展開だった。


「杉村大蔵君を利用して、便乗しているのは武部幹事長自身だろ?」


大仁田は早速、幹事長に噛み付いた。

ここで幹事長や自身が炎上し、後は武部幹事長と口論にでもなれば、それこそ“プロレス”だ。


批判され、炎上し、注目を集めたら、それで大仁田厚の“勝ち”だ。

だから、“炎上商法”🔥

政治家になった大仁田は、政治も自分のペースでやろうとした。


だが、そうはならなかった。

大仁田の“戦法”などはとうに見透かされていたのだろう。

『杉村大蔵教育係』の話は立ち消えになり、大仁田は議員の任期を終えた。

政治家は『自分のペースにはならない』と分かったのだろう。


大仁田は自分の信者を作るのが、抜群に上手い。

様々なレスラーに喧嘩を売り、自身のペース(電流爆破⚡)に巻き込んでしまう。

そのインパクトと、涙💧で信者を熱狂させる。

信者は、血ダルマになり、ボロボロで泣き叫ぶ大仁田(のプロレス)に感化する。

勝敗や、格闘技の実力などどうでも良いのだ。


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それはアントニオ猪木異種格闘技戦“猪木-アリ”に似ている。

 

あの闘いにおいて、勝敗などはどうでも良い。

“あの”モハメド・アリが、“我らの”アントニオ猪木の対角線上にいて、アリと闘う。

それだけで猪木の勝ち😁である。

 

『猪木-アリ』はある意味、猪木の勝利者宣言とも言えるのだ。


大仁田は“プロレス”が上手い。

そして、プロレスの“本質”の一部を分かっている。


プロレスの目的は“興奮(ヒート)”だ。

 

会場に来た観客を怒らせ、泣かせ、脅かせて、興奮させる。

その為に、プロレスラーは跳んだり跳ねたり騒いだり怒鳴ったりするのだ。


大仁田は7回引退し、8回復帰している。

大仁田に取って、自身の引退復帰もまた“プロレス”なのだ。


引退を宣言し、『もう俺を見れないよ…』と観客を煽り、復帰し『俺はまだプロレスやる!』と宣言して、観客(ファン)を煽る。


そこもプロレスだ。

「辞めたり、復活したり、いい加減にしろや!」と言う批判もまた大仁田の“プロレス”なのである。


人生の“動向”さえも“プロレス”にする大仁田は、本当にプロレスが上手い。

大仁田に絡む、関係性を持つだけで、“勝ち”だ。


大仁田の言葉で気になった事がある。


「“嫌い”というのも、一つのコミュニケーションだ。つまり俺(大仁田)の事を『嫌いだ』と言うこと自体が、一つのコミュニケーションだ」


確かにコミュニケーションを取りたくない他人に対して、『嫌いだ』と発言するのは、一見、“拒絶”に思える。

だが、『拒絶する』という行為もまたコミュニケーションだと、大仁田は言うのだ。

 

では、本当に拒絶したい他人とは、どうしたら良いのか?


『無視』しかない。

大仁田の言葉を使えば「『嫌いだ』とさえ言わない。関わらない」である。


大仁田と“関わり”を持った時点で、大仁田の“勝ち”になってしまう。


だから、俺は大仁田が嫌いだ。

 

そして、『大仁田が嫌いだ』と発言した時点で、大仁田に負けてしまう。


だから、大仁田が嫌いだ。