鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

8/8 腰抜け寿司店長の伝説

コロナのせいか、出前とかデリバリーが流行っている。利用客が増えているようだ。

 

「デリバリー」と聞いて、思い出す“人”がいる。

 

数年前、俺は勤めていた求人雑誌の会社をクビになり、無職になって世の中に絶望していた。

…もっとも、この後、俺は再(々)就職して脳腫瘍になり、本当に地獄を見ることになるのだが…。

 

そんな俺は日雇い派遣で生活費を稼いでいた。

その時によく派遣されていたのが、とある宅配寿司のチェーン店だった。

 

浜松市内に数店舗あり、おそらく全て派遣されたと思う。

田舎は何かと祝い事、集まりに寿司が出るので、こうした宅配寿司はかなり需要が高かったかもしれない。

 

宅配用の原付🛵に乗り、注文を受けたお宅に寿司を届ける仕事だ。時給がそこそこ良いので、無職の間に度々お世話になっていた。

 

今でもたまに思い出すのだが、そこに働く人達はなかなかアクが強く、理解し難い人ばかりだった。

 

俺がよく派遣されたのは、市内でも南にある宅配寿司店だった。

そこの正社員である店長が、かなりイカれた奴だったので、かなり覚えている。

 

歳は俺と同じ位(同時、20代後半)、顔がデカくて、生真面目な若い男性だった。

 

彼には“悪い癖”があった。

 

宅配スタッフが少し遅いと「遅かったですね…」と嫌味を必ず言うのだ。

俺も言われた事がある。

どうも、宅配スタッフが店を出てから帰って来るまでをどこかで計っているらしく、宅配先から店への往復時間を仮定しているようなのだ。

それに対し遅くなると…、

 

「遅かったですね…」

 

と睨み付けながら言うのだ。

これは宅配スタッフには仕方ない事だ。

浜松市街外から来ている派遣もいれば、その時の道路事情にもよる。

遅くなりたくなくても、なってしまう事があるのだ。

また、こちらは派遣という“弱さ”もある。

「…遅かったですね」と嫌味を言われても「…すいません」としか言えない。

 

ある時、俺と一緒に入った少しヤンキー風の派遣が、その店長に「…遅かったですね」と連発で言われてキレた。

 

「…ふざけんな! 少し迷っちまったんだよ💢」

 

ま、それが本当かどうかは分からないが、キレたヤンキー派遣は「やってられるか!」と店長に怒鳴り付けて、帰ってしまった。

俺は最後までいたのだが、店が終わった後、その店長に言った。

「あんまり、『遅い』とか言わない方が良いのでは?」

すると、その店長が嫌味を言う理由を教えてくれた。

その宅配寿司チェーンは、全国展開している有名チェーンなのだが、いわゆる“ブラック”体質であり、常に人員はギリギリ、“上”からは「ノルマ、ノルマ」と締め付けられている。

毎日の売上に一喜一憂し、たまに来る本社からの“叱責”に怯える日々…。

そんな中、派遣の日雇いで来ている奴らが、配達を遅れたりすると、「カチン💢と来る」らしい。

 

「僕がこんなに追い詰められながら働いてんのに、遅くなかったりするのって、“あり得ない”じゃないっすか?」

 

 かなり独り善がりな話だが、俺は少し同情してしまった。

 なぜなら、俺も以前はそうした“ブラック企業”で、馬車馬のように働いていたからだ。

 ブラック企業の社員は酷い😭

 休みなど皆無。『お客様の為』という“大義名分”の前で擦りきれるほど働かされる。

 

 この人(店長)もそういう“被害者”なのか。

 

 そう思うと、少しかわいそうに思えた。

 ブラック企業の社員は辛い😢

 それは俺がよくわかっている。

 

 それでも、この店長は相当おかしな奴だった。

 

 ちょうど、夏休みで市内の“盆休み”が連続していた時。いつもは“日雇い”派遣契約の宅配寿司店が、珍しく週単位で派遣契約をした。

 俺は金曜~翌木曜迄、という契約をした。

 だが、月曜日だけを休みとした。

 そんな契約をしたのは、俺だけではなく、同じ派遣会社から派遣された数人がそうだったと思う。

 

 金、土、日曜と猛烈な忙しさの中で働き、俺は明けて月曜日に休んだ。

 そして、火曜日に店に向かうと店長がカンカン💢に怒り狂っていた。

 

 店「ちょっと! 何で昨日(月曜)、出てくれないんすか」

 俺「…いや、月曜は休みの契約では?」

 店「何、言ってんすか!💢 昨日(月曜)、むちゃくちゃ忙しくて、人も足りなくて…」

 俺「…それを俺に言われても」

 

 どうやら、「盆休みだが、月曜日は大したことないだろ?」とタカを括っていたらしいが、実際はとんでもない忙しさだったらしい。

 はっきり言えば、その店長の“見込み違い”、“甘い憶測”である。(本人には言えなかったが)

 

で、店長は俺が出勤しない事が相当頭に来たらしい。

 俺が『そういう契約では?』と主張したが、

 

 店長の主張は『そういう契約だろうが、“察して”出勤してくれ』というむちゃくちゃな話だった。

 

「ならば、俺の派遣会社と月曜にお願いしたら?」というような事を言ったが、店長は信じられない事に、

 

 「そんな事を本社に言えるわけないでしょ!💢」

 

と、言った。

 俺は、開いた口が塞がらなかった。

 つまり、俺(日雇い派遣)が“自発的”に店の忙しさを“察して”、出勤して欲しい、という事だった。

 

 (コイツ、本社に「忙しい」と状況報告の1つも言えないのか?)

 

 いうならば、「腰抜け」である。

 言いやすい人間(派遣)にしか、文句を言えない。しかもそれはほぼ愚痴だ。

 

 この出来事で、俺はこの店長を“見限った”。

 多少、同情したが、単なる“弱いものいじめ”に偏るならば、所詮は“腰抜け”である。

 

 俺はその後、この店に“派遣NG”を出した。

 あの“腰抜け”店長の顔を見たなかった。

 

 数ヵ月後、俺は派遣先が減って、派遣会社側から急かされ、この店に日雇いで入った。

 すると、なんと“腰抜け”店長はいなくなっていた。

 東京の店舗に異動したらしい。

 

 俺は(あの人、何だかんだ言いながら、ブラック企業にしがみついていくんだろうなぁ)と思った。

 

 無論、その後、その店長がどうなったかは知らない。また愚痴りながら働いているのかな?

 

 もし再会したら、いきなり殴ってみようかな?