鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

派遣録23 甘言と苛立ちの果てに…。

確か、2007年の夏過ぎだったと思う。

二課のとある営業さんから、「鈴木くん、正社員にならない?」と言われた。

 

その前から、他の営業から「営業になれば?」と言われたりしていた。

だが、俺にそんな気持ちは全くなかった。

俺に求人誌の営業など無理である、と思っていた。

営業のサポートをしていて、その厳しさはよくわかっていた。よく新しい営業が入ってきて、よく辞めていた。

営業は弱肉強食な世界であり、俺みたいな素人が出きるはずないと思っていた。

要するに、尻込みしていたのだ。俺も“腰抜け”だった。

 

営業の雑用や部長の愚痴にイライラしながらも、俺はどこか遠慮があったのは、皆が威張るだけの仕事をしていたからだ。

俺などそんな営業の手伝いをして小銭👛(給料)を得ているに過ぎないと、頭のどこかで分かっていた。

 

だが、その営業さんが言うには、「立場は営業サポート」や「原稿校正・管理」のままで社員へ待遇を昇格させるという、話だった。

 

かなり俺の都合“だけ”を考えてくれる甘い話だった。

 

そして、俺はこれに乗ってしまった。

俺も既に二十代半ば。いつまでもバイトで、休みに日雇い派遣で僅かな金を稼いでいる場合ではない。

それに、ここまで散々と営業の雑用やわがままに応えてきた。

(…俺も少しぐらいは)(…やっぱり正社員になりたい)と思ってしまった。

コキ使われるのは仕方ないが、もうそれなりの給料💴が欲しかった。

それはダメなのか?

 

というのも、この話の少し前。俺は本社のお偉いさんに注意を受けていた。

 

俺の通勤交通費は会社から全額出ていたのだが、専務が「なんでバイトなんぞの通勤費を払わないといけないんだ💢」と怒ったらしく、俺の交通費が全額カットされたのだ。

これに俺は相当カチン💢ときた。

入社時に『交通費全額支給』と聞いていたのである。

それが突然のカット💢 

 

これもおそらくは社内の勢力の兼ね合いだったのだろう。

 

頭に来た俺は、車通勤を止め、二課まで片道一時間の道程を自転車🚲️で通勤した。

毎日、汗だくになった☀️😵💦

二課の皆は驚いた。

「お前、マジか?」「しんどいだろ?」

もちろん長距離の自転車通勤は大変だった。

だが、俺はあえて「交通費、出ないんで…」と応えた。つまり、会社や専務が俺の交通費を無くしたから仕方ない、ということである。

別に遅刻しなければ、通勤方法は何でもいいはずだ。

そして、「今日、自転車なんでもう帰ります…💦」と部長の残念を断り、いつもより早めに帰宅したりした。

部長を含め、二課の連中はそんな俺を哀れには思っていたようだが、別に何もしなかった。

専務の決定に逆らえなかったのである。

 

そのうち、さすがに毎日の自転車通勤に疲れ、ネットオークションで格安の原付🛵を購入して、それで通勤するようになった。

(今、俺が原付に乗っているのはこの時の経験からだ)

 

俺は、相当頭に来ていた💢

いきなり交通費を無くされ、いつもあれこれと俺に言ってくる営業の皆が、こうなると“ダンマリ”を決め込んでいたのが、悲しかった。

皆が普通に車通勤する中で、俺だけが自転車🚲️や原付🛵で通勤…。

(…俺はここの仲間ではないのか?)と無言のアピールをしていた。

 

今から思うと、その時の俺は営業にはならないくせに権利ばかり主張していたな。非常に愚かで子供っぽい。

会社からしたら当たり前の処置だった。

それを二課の皆に“大変”アピール。

情けないな。

 

ただ、俺は今もこの処分を怒っている。(相変わらず小さい…

 

 

おそらくそんな経緯から、その営業の方は俺に『正社員昇格』を提案したのだろう。

その営業さんは、例の専務と仲が良かったのもあり、(…お願いしたら)という期待があったのかもしれない。主流派から落ちたとは言え、まだ“力”があると思っていたのだろう。

 

で、甘い俺はその気になってしまった。

…本当にバカだな。

 

そして、この話がなかなか進まなかった。

確か、夏くらいにこの話が出て、秋を過ぎても一向に正社員昇格の連絡は来なかった。

 

今から考えたら当たり前だ。

営業でもない営業のサポートをしていたアルバイトを『社員にして』と現場から言われてもすんなり成れるはずがない。

 

ある日、俺は総務部長で社長の娘婿に呼び出され、怒られて(何故?)、「社員になるには…」などとお説教をされた。

俺はキレてしまった💢

総務部長の顔を指差して「うるさいよ」と言ってしまった。

散々とコキ使われ、愚痴に付き合わされ、交通費は無くされ、「正社員にするから」と散々待たされ、怒られ、果てはお説教…。

俺が何か悪いことしたのか?

会社に迷惑かけたか?

マジで辞めてやろうと思った。

 

二課に戻り、初めて部長にぶちキレた💢

「もう正社員にはなれないんでしょ!? …それならもう辞めます! クビで良いですよ!」

 

俺はこの連中(二課)が、俺に“正社員”という餌を見せて、自分らの都合良く使おうと思っていると感じていた。

 

部長は言い返してくると思った。

だが、違った。

「まあまあ、す、鈴木くん。俺からも“上”にお願いしておくからさー」と怒り狂う俺をなだめてきた。

 

意外だった。

いつもの愚痴るように「うるせぇ!」と言われると思った。

そう言われたら、辞めるつもりでいた。

バカにされているようだった。

 

で、俺の正社員昇格の話は白紙になったらしい。

幹部の中には、「あんな口をきくバカを社員になんて…」と俺と総務部長のやり取りを聞いていた専務などは思ったらしい。

俺は本気で退職するつもりだった。こんな人をバカにしてくるところにはいたくなかった。

日雇い派遣をメインに日銭を稼ごうと思っていた。

 

だが、部長は俺に「正社員にしてあげるから、ちょっと待ってて」と言った。

 

本当に俺を正社員にするために動いているようだった。

あの他人の事など二の次の部長が、何故なのか?

 

この部長なりに、俺にかかるストレスを理解していたのかもしれない。

また、これまで散々と愚痴を聞かせてきたのを、それなりに反省していたのかもしれない。

そして、おそらくだが、俺のように言うことを聞く“手下”を手放したくなかったのたろう。

 

今から思うとだが、この時の会社側(総務部長、専務ら)の対応はかなり理解できる。

当時はまだリーマンショック前で求人案件は多く、会社はそれなりに好調だった。

とはいえ、無駄な人員(俺)を抱えたくはない。

人件費は一番の無駄だ。

営業でもなく、製作でもない、“サポート”をするアルバイト(俺)を、何故、社員に昇格できるか?

するにしても、その前にお説教くらいしたくなるのが普通だ。

 

こうして数ヶ月待たされ、俺は正社員になれた。

会社の幹部から許可が降りたのだ。

部長らが上を説得したのだ。

 

給料は最底辺だったが、嬉しかった。

本当に嬉しかった。

 

ここ数年、雑用に追われ、愚痴らるまくり、我慢した甲斐があった。

部長からは、「もう偉い人に逆らうなよ」も釘をさされ、さらに「正社員なんだから、少し任せる仕事を増やすぞ」と言われたが、気にならなかった。

望むところでもあった。

 

これが、2007年の年末近くだった。

 

そして、これが地獄への始まりだった。

リーマンショックの足音はまだしていなかった。

俺は数年ぶりに正規採用になれて、とにかく嬉しかった。

 

日雇い派遣はもう辞め事にした。