鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

プロレス心理学⑧ 未知への嫌悪

長州力のエピソードの中で、

(この人らしい)

も思った話がある。

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長州力は妻となる女性(離婚後再婚)と、初めてデートした際に、自身のマネージャーに付いてきてもらい、そのマネージャーを介して話をしていたらしい。

当時の長州は20代後半。
すっかり一人前の男性である。それが女性と話をするのにマネージャーを介するとは、なんと気の小さい人間なのか?

長州が"人見知り"だったか?
いや、そんな人間が藤波にキレて"噛ませ犬"発言はしないし、新日本プロレスを飛び出したりしないだろう。

つまり、長州力は怖かったのである。

自身の『ファンだ』という女性に対しても、彼女がいかなる人間で、どんな対応してきて、どんな発言をしてくるか、分からない。
だから、マネージャーに付いてきてもらったのだ。

なんて情けない男であり、器の小さい男であるか?

しかし、我々はそんな長州力を笑えない。

我々も知らない人間には恐怖を感じないだろうか?
初見の人間は何をしてくるか、何を言ってくるか、分からない。
自分に利益をもたらす人間か、損害を与える人間なのか、分からない。

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だから、人は他人を怪しみ、恐怖する。
出来たら、自分が知り、自分に利益しか与えない人間と付き合いたい。
損害を受けたくない。
批判されたくない。
文句を言われたくない。
賛同されたい。誉められたい。称賛されたい。

だから、長州は"プロレス"しかしない。
彼はそこでしか自分が生きられないことを知っていて、それが分かっている。
小さく、矮小な器量の人間だ。

だが、誰もそうである。人間の全てが小さく、矮小なのである。

思い当たる事がある。

以前、働いていた現場で、昼休みに若い女性と話をした。その女性がたまたま俺が以前働いていた場所の近くで働いていた事がわかり、世間話程度の話をした。

昼休みが終わり、午後の仕事に戻ると、一緒に働いていた奴がおかしな事を聞いてきた。

同僚「…あの娘、どこから来てんの?」

その同僚は俺が先程の女性と世間話をしている所を見ていたらしい。
だが、彼女がどこに住んでいるかまでは会話に出なかったので知らない。

俺「さぁ?」
同「…ん? どこなの?」
俺「知らないよ。気になったなら聞いてみたら?」
同「鈴木君、聞いといてよ」
俺「はあ? 自分で聞けよ💢」

すると、この同僚がおかしな事を言った。

同「…だって、恐いじゃん?」
俺「はぁ?」

女性は20代半ばくらいであり、俺とその同僚は30代。
女性の容姿はごく普通の女性である。

何か怖がる事があるのか。
いきなり女性に住所を聞くのは失礼だが、世間話の中でさりげなく聞いたら良いではないか?

そんな事を言うと、同僚は、

「だって、俺、あの娘と話したこと無いんだよ。何言われるか、わからないでしょ?」

(なんて胆の小さい男なのか?)
あんなか弱そうな女性、しかも俺たちは"先輩"でもある。

何が怖いのか?
情けない同僚である。自分から話し掛ける度量も無いのだ。

だが、そんな同僚を俺は笑えない。

数日後、俺は同じ現場で働く女性(先程の女性は別人)を飲み会🍻に誘いたくて同僚に

「誘ってみてよ~✴」

などと頼むからである。

理由は俺だと"嫌われそう"だからだ。
俺はその女性とは話したことがなかった…。

俺も他人が怖い。未知の存在を嫌悪していた。
だが、社会に出るということは、その"未知の連続"であり、
自分を成長させたいのならやはり"未知への嫌悪"を乗り越えるしかない。

自分がよく知っている、自分が"一番"の世界しか知らぬ者は、自分が知らない、もしくは知らされていない"場所"に踏み込み事を極端に嫌がる。

知らない他人。
新たなる人間。
それが"判別"できないから恐い。近付いて来て欲しくない。

しかし、そこを踏み込まなくては進まない。

もしくは長州のように、リアルな他者を排除した"小さな社会"でしか生きられない自分を認めるかである。

そんなアナタ(俺も…)にとって、判別できない未知なる他人は恐怖でしかない。

長州力の矮小さは、我々の狭量な器質と変わらない。

かつては、プロレスの"序列"に怒り、藤波に怒った長州力にしてはおかしな態度である。

『プロレスの序列がおかしい』(噛ませ犬発言)、と主張していた長州自身がプロレスの序列に拘って、守られたがっていたからだ。

勝敗の定まっていないアマチュアレスリング出身の長州であるなら、未知の相手と戦うのは当たり前の話である。

未知への恐怖、嫌悪を示したこの頃、長州力は"プロレス"の世界で生きていく事を決めたのではないか?

何度も書いているが、プロレスの勝敗は決まっている。
レスラーは決められた"結末"に向かい、協力して試合を作り、観客を興奮させる。

結末の決まっているプロレスの試合に、己の生きる道を見出だした長州にとって、未知なる他人は、恐怖の対象でしかない。
戦う意義がない。
未知なる他人との"対戦"は自分の利益に寄与しない。
だから、未知の他人が嫌だ。
「マネージャーよ。付いてきてよ。俺の代わりにその娘と話してよ」となる。

誰しもが、他人が怖い。
誰しもが、他人を自分の思い通りにしたい。

だが、一般社会ではそんな事はできない。
"怖い他人"はアナタの思った通りにはならない。
(…だから"怖い"のだが)

プロレスは結末が決まっているし、対戦相手が何をしてくるか、何をしたいかが、あらかじめ分かっている。

だから、プロレスには恐怖が無く、嫌悪も抱かない。
だから皆、"プロレス"をしたがる。

プロレスなら安全だ。
「てめぇ、殺すぞ!」なんて言われても、殺される事はない。自分が"勝ち役"ならこっぴどく負ける事もない。

だから、長州は"プロレス"しかしないのだ。
女性であろうが、知らない人間が恐い。

覚えておこう。
誰もが未知の人間が恐い。嫌悪する。

アナタも俺も…。