鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

派遣録⑧ ロト6おじさん

2005年夏。

地元求人誌の編集社にアルバイト入社した俺は、月2回東京で開催されていた“ライター養成講座”のための上京代などで日々の生活資金が不足していた。

 

なので、バイトが休みの日には、基本日雇い派遣で働いていくことを決めた。

 

こういう時に日雇い派遣は便利だった。

働きたい時に働きたいだけ働く、という日雇い派遣のスタイルは、この時の俺に合っていたし、入社前から日雇い仕事はしていたので、何の苦慮もなかった。いわゆる“ド短期バイト”感覚だった。


この頃(求人誌編集期)の俺の主な日雇い派遣は…、

 

中区・袋井の倉庫📦️

ピサ、寿司の宅配🍕

スーパーの品出し 🍫

他の飲食店など🍜


という感じだった。開始当初のヤ○ハ工場、ディスカウントスーパーの品出しは、この頃は行かなくなった。


全て、今はないグッドウィ○の紹介だった。

 

その中でも浜松の中区にある倉庫ではかなり働いた。ここは高速の西インターに近いからか、倉庫が多い地域で、倉庫内ピッキング系の仕事📦️が豊富にあった。

袋井の倉庫にもよく行っていた。


ちなみに浜松には、高速の東口もあり、その出入り口も倉庫が多い。だが、俺はそちらではあまり働いていない。


倉庫内ピッキング作業📦️は基本1日勤務だ。朝8時から午後5時が目安。

忙しいと、残業なんかもたまにあった。


日雇いにはいろんな人間がいた。

この倉庫作業のように大人数を要するに現場は2,30人ほどの日雇いが集められていた。

たまに喧嘩もあったし、盗難騒ぎもあった。

口の悪い人間も多く、気の小さい奴をイジていたり、それを正規の社員に見つけられ、注意されたりする奴、中にはそれで途中でいなくなる日雇いもいた。

“バン子”のように夢を追う若者もいたなあ。


みんな働く理由は様々だった。

この頃、“ライター講座”に通う俺も“夢追う若者”だったのかな?


この中で俺が一番思い出に残っているのは、“ロトおじさん”だ。


ある日の朝、日雇いの集合場所兼荷物置き場に行くと、日雇いらしきおっさんが、携帯片手にブツブツとキレていた。

電話の相手はグッド○ィルの事務所らしい。

自宅からここまでの交通費をねだっていた。

日雇いは基本、交通費が出ない。あるあるだ。

そして、それをゴネて取ろうとする日雇いがいるのとあるあるだ。


おっさんは朝からそれで事務所(派遣会社=グットウイ◯)と揉めていた。


そして作業が始まり、昼の休憩時間になった。


昼休憩は一時間あり、倉庫には食堂もあった。


だが、別棟にあり、日雇いが働いていた倉庫からそこに、いくだけで15分はかかった。

なので、日雇いは基本的にはそこには行かず、あらかじめ、昼飯を購入し、倉庫の外や涼しい場所で食べた。


その日、俺はコンビニ弁当を買い忘れ、昼飯を抜いた。

給水場で水を飲んで、することもなく、日雇いの控室に戻ると朝のおっさんがいた。

何やら紙を広げて、またブツブツと言っていた。


俺はおっさんを意識しないように遠くのベンチに座った。


すると、おっさんの方から「ん?」というかのように目線を合わせてきた。

“朝の様子”を知っていた俺はあえて無視した。


すると、おっさんは「…ん、これ?」と尋ねても無いのに自分が広げていた紙の説明を開始した。


それは“数字選択クジ”ロト6だった。その“出目”をまとめたものだった。

1から42までの数字をランダムに選んで、週一回(?)の抽選で当たれば、一等数億円もあり得る宝くじだ。(…だよね?)


俺はそれをしたことがなかった。

というか、宝くじは年末に3000円程の購入したり、サッカーくじを買ったりするくらいだった。


そのおっさんは、暇そうな俺にいかにこのロト6が有益かを熱っぽく語り出した。

「毎週、数億円だよ~」

「たまに当たるんだよね~」

「大当たりしたら、生活変わるよ♪」


俺はおっさんを変に刺激しないように「へー」とか「そうなんすか?」と適当に相槌をした。


そのおっさんは、本当にそれで億万長者💴になる気だった。


ロクにギャンブルなどしない俺には、なんだかそのおっさんの話が悲しく思えた。

そんなもの、当たるとは思えなかったからだ。

だが、購入するのは他人の勝手だ。

おじさんの歳は、40代。

そして日雇いで働き、数字選択クジ(ロト)で一攫千金💴💴💴を狙う…。

 

今の俺(2023て45歳…)からみると、その気持ちは分かるが、まだ20代で月に2回、東京で夢を追っていた(?)俺には理解できなかった…。


「いつかは大当たりするかも?☺️」と思いながら、おっさんは日雇いの交通費を派遣会社(事務所)にせびっているかと思うと、その姿に人生の悲哀さえ感じた。


このおっさんは、どこまで行けば“金持ち💴”になれるのか。

おっさんは、そのままでは一生なれない気がした。そのロト6が大当たりしない、とは言い切れない。

 

だが、おっさんその日まで、これからもその日(大当たり)を夢見て、日雇い仕事の倉庫で働き、交通費で揉める気なのか。


救いの無い話に思えてしまったのだ。


その後もそのおっさんとは数回、そこの倉庫で顔を合わせた。その日以来、話などしなかった。俺は昼食を忘れず購入し、倉庫の外の涼しい木陰で食べるようになったからだ。


そのうち、その“ロト6おじさん”は見かけなくなった。

他の日雇い先に変えたのか、本当にロトで大当たりしたのか。

俺には分からなかった。


その後、俺も1度だけロト6を1000円だけ購入してみた。

…かすりもしなかった。そんなもんだろ?