2005年夏。
地元求人誌の編集社にアルバイト入社した俺は、月2回東京で開催されていた“ライター養成講座”のための上京代などで日々の生活資金が不足していた。
なので、バイトが休みの日には、基本日雇い派遣で働いていくことを決めた。
こういう時に日雇い派遣は便利だった。
働きたい時に働きたいだけ働く、という日雇い派遣のスタイルは、この時の俺に合っていたし、入社前から日雇い仕事はしていたので、何の苦慮もなかった。いわゆる“ド短期バイト”感覚だった。
この頃(求人誌編集期)の俺の主な日雇い派遣先は…、
中区・袋井の倉庫📦️
ピサ、寿司の宅配🍕
スーパーの品出し 🍫
他の飲食店など🍜
という感じだった。開始当初のヤ○ハ工場、ディスカウントスーパーの品出しは、この頃は行かなくなった。
全て、今はないグッドウィ○の紹介だった。
その中でも浜松の中区にある倉庫ではかなり働いた。ここは高速の西インターに近いからか、倉庫が多い地域で、倉庫内ピッキング系の仕事📦️が豊富にあった。
袋井の倉庫にもよく行っていた。
ちなみに浜松には、高速の東口もあり、その出入り口も倉庫が多い。だが、俺はそちらではあまり働いていない。
倉庫内ピッキング作業📦️は基本1日勤務だ。朝8時から午後5時が目安。
忙しいと、残業なんかもたまにあった。
日雇いにはいろんな人間がいた。
この倉庫作業のように大人数を要するに現場は2,30人ほどの日雇いが集められていた。
たまに喧嘩もあったし、盗難騒ぎもあった。
口の悪い人間も多く、気の小さい奴をイジていたり、それを正規の社員に見つけられ、注意されたりする奴、中にはそれで途中でいなくなる日雇いもいた。
“バン子”のように夢を追う若者もいたなあ。
みんな働く理由は様々だった。
この頃、“ライター講座”に通う俺も“夢追う若者”だったのかな?
この中で俺が一番思い出に残っているのは、“ロトおじさん”だ。
ある日の朝、日雇いの集合場所兼荷物置き場に行くと、日雇いらしきおっさんが、携帯片手にブツブツとキレていた。
電話の相手はグッド○ィルの事務所らしい。
自宅からここまでの交通費をねだっていた。
日雇いは基本、交通費が出ない。あるあるだ。
そして、それをゴネて取ろうとする日雇いがいるのとあるあるだ。
おっさんは朝からそれで事務所(派遣会社=グットウイ◯)と揉めていた。
そして作業が始まり、昼の休憩時間になった。
昼休憩は一時間あり、倉庫には食堂もあった。
だが、別棟にあり、日雇いが働いていた倉庫からそこに、いくだけで15分はかかった。
なので、日雇いは基本的にはそこには行かず、あらかじめ、昼飯を購入し、倉庫の外や涼しい場所で食べた。
その日、俺はコンビニ弁当を買い忘れ、昼飯を抜いた。
給水場で水を飲んで、することもなく、日雇いの控室に戻ると朝のおっさんがいた。
何やら紙を広げて、またブツブツと言っていた。
俺はおっさんを意識しないように遠くのベンチに座った。
すると、おっさんの方から「ん?」というかのように目線を合わせてきた。
“朝の様子”を知っていた俺はあえて無視した。
すると、おっさんは「…ん、これ?」と尋ねても無いのに自分が広げていた紙の説明を開始した。
それは“数字選択クジ”ロト6だった。その“出目”をまとめたものだった。
1から42までの数字をランダムに選んで、週一回(?)の抽選で当たれば、一等数億円もあり得る宝くじだ。(…だよね?)
俺はそれをしたことがなかった。
というか、宝くじは年末に3000円程の購入したり、サッカーくじを買ったりするくらいだった。
そのおっさんは、暇そうな俺にいかにこのロト6が有益かを熱っぽく語り出した。
「毎週、数億円だよ~」
「たまに当たるんだよね~」
「大当たりしたら、生活変わるよ♪」
俺はおっさんを変に刺激しないように「へー」とか「そうなんすか?」と適当に相槌をした。
そのおっさんは、本当にそれで億万長者💴になる気だった。
ロクにギャンブルなどしない俺には、なんだかそのおっさんの話が悲しく思えた。
そんなもの、当たるとは思えなかったからだ。
だが、購入するのは他人の勝手だ。
おじさんの歳は、40代。
そして日雇いで働き、数字選択クジ(ロト)で一攫千金💴💴💴を狙う…。
今の俺(2023て45歳…)からみると、その気持ちは分かるが、まだ20代で月に2回、東京で夢を追っていた(?)俺には理解できなかった…。
「いつかは大当たりするかも?☺️」と思いながら、おっさんは日雇いの交通費を派遣会社(事務所)にせびっているかと思うと、その姿に人生の悲哀さえ感じた。
このおっさんは、どこまで行けば“金持ち💴”になれるのか。
おっさんは、そのままでは一生なれない気がした。そのロト6が大当たりしない、とは言い切れない。
だが、おっさんその日まで、これからもその日(大当たり)を夢見て、日雇い仕事の倉庫で働き、交通費で揉める気なのか。
救いの無い話に思えてしまったのだ。
その後もそのおっさんとは数回、そこの倉庫で顔を合わせた。その日以来、話などしなかった。俺は昼食を忘れず購入し、倉庫の外の涼しい木陰で食べるようになったからだ。
そのうち、その“ロト6おじさん”は見かけなくなった。
他の日雇い先に変えたのか、本当にロトで大当たりしたのか。
俺には分からなかった。
その後、俺も1度だけロト6を1000円だけ購入してみた。
…かすりもしなかった。そんなもんだろ?