鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

1996年のUインター② 10.9

この前、テレビであるプロレスファンが、「10.9は"プロレスが変わった日"」と言っていたが、俺にとっては違う。
UWF幻想が終わった日』だった。

『1995.10.9 東京ドーム 新日vsUインター団体対抗戦』
今も東京ドームの観客動員記録を持つ、プロレス界最大の団体対抗戦だ。

その前年(1994年)、Uインターの安生がグレイシー柔術の道場でボロクソに負けた。UFCという"何でもあり"の格闘技大会で圧倒的な力さを見せて優勝したホイス・グレイシーと"グレイシー柔術"の存在は、"UWF幻想"に取り付かれていた俺の興味を激しく刺激した。
Uインターに連なる"U系団体"は、プロレスの"守護神"だ』と思っていた。俺にとって、安生の挑戦は当然であり、彼がボロクソに負けたのも、
『実力No.1の高田(延彦)だったら、何でもありのルールでも負けるわけがない』
と、本気で思っていた。
何故なら、彼らは格闘技の実力がありながら、"敢えて"、"プロレス"をしているのだから。

そう思っていた"UWF高田信者"は多かったはずだ。

そして、翌年には『10.9』があった。
当時、高校生だった俺は、同じプロレスファンの友人と新日選手の敗退を予想した。
「話にならんな。絶対、Uインター勢の圧勝だろ?」
彼も俺と同じように新日等の既存のプロレス団体を観ながらも、"実力No.1"はU系団体だ、と思っていた。
そして、当然、この戦いは"プロレス"ではなく、何でもありの"リアルファイト"だと思っていた。
(ま、"守護神"が"住人"とリアルファイトするってのはおかしいが…)

だが、蓋を開けてみると、5勝3敗で新日の勝ち。しかも高田は武藤敬司のドラコンスクリューからの足四の字でタップ負け。

言葉が出なかった。
彼らは"プロレス"をしたのだ。

今も覚えている話がある。
大会の速報を告げる『週刊プロレス』のターザン山本のコラムに、大会終了直後、Uインターファンが編集部に怒鳴り込んできた話が書かれていた。
そのファンは「"プロレス"をした高田、安生が許せない!」と怒り狂っていたらしいが、その気持ちはよくわかる。

俺も当時付き合っていた彼女(非プロレスファン)に敗戦と彼らの"変節"に対する怒りをブチ負けた。
(今考えれば酷い話だ。…当然、フラれた)

それで思った。
『彼らはプロレスの"守護神"では無いのでは?』

『リアルファイトの実力がありながら、"敢えて"プロレスをしている』のではなく、
『元々、"リアルファイトっぽい"プロレスしか出来ない人達』なのでは?

彼らは守護神などではなく、バッチリとしたプロレス界の"住人"そのもの、では?

後から冷静になればすぐ分かる事だったが、まだ総合格闘技など漫画の中の世界であり、プロレスの延長線上に世界最強があると思っていた俺にとっては、編集部に怒鳴り込んできたファンの気持ちがよくわかる。

全ては"幻想"だったのだ。

リアルファイトはUインターには無い。彼らはプロレスラーだった。