鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

プロレス心理学41 social relevance assessment(社会的適合評価)と"エスケープ"

前回の"ヒールホールド(忙しい!)"の話を書いていて、思い出した事がある。

その会社にいた時、母親が太腿の大動脈瘤が見つかった。
幸い、早期に発見したので、一週間程の入院と手術で直る事が出来、命に別状無かった。
ロクに見舞いにも行かなかったが、手術の日、さすがに付き添いぐらいはしたかったが、その日はあいにく、『締め切り日』であった。
俺は部長に「母親がその日に手術するので、午後5時過ぎには退社していいですか?」と尋ねた。

部長の対応は、

「…あぁ、そう? 良いよ」

だった。
後から思えば、かなり曖昧な返答だった。果たして、締め切り日。
俺は5時過ぎに退社する事を告げると、部長はブチキレ出した。

「何で! 何でこんな時間に帰るんだ!」

俺は先に「5時過ぎには退社させてください」とお願いした事を告げた。
すると、部長は"いつもの"必殺技である「忙しい!」を理由に俺の申し出を覚えていないと言い出した。

俺は部長のこの一件で、完全に見損なった。

さらに、その年の瀬、忘年会において俺は酔った🍺😵🌀フリをして、部長にその話を蒸し返した(俺もしつこいなぁ)。

すると部長は、その事自体を"忘れていた"。
「そんな事、あったっけ?」と言っていた。
そしてまたいつもの「忙しくてさー」を連発した。

初めは"わざと"忘れていたフリをしているのかと思っていたが、この人は本当に忘れていた。
俺の事など眼中には無く、思慮の内に入れていないのだ。

その時はかなり頭に来たが、よく考えたら、この部長の対応は間違っていない。

会社として、また部長として、まず守るべきは会社という組織の存続と利益である。
確かに部下がその母親を心配するのを否定できない。
「人として…」と言われたなら褒められた対応ではない。

だが、部長は人である前に、会社という組織に属する会社員である。
会社としての利益を第一に考えるのは当たり前であり、部下の母親の事を覚えていても一円の利益にもならない。
俺がいくら「あの"人でなし"が…」と恨んでも気にする必要は無い。

以前も書いたが「人としておかしい」という問いかけ(social relevance assessment"社会的適合評価")は、それ自体がおかしい。

人は人である前に、会社員だったり、組織に属する人間だからだ。

「人は皆、人として正しく有らねばならない」というなら、俺を含め、多くの人間は『人間失格』である。

この部長は人である前に、出版社の営業部長として当たり前の行動を取っていただけであり、それにのっとり行動、思考していた。
だから、部下の母親の事など覚えておく必要性がないのだ。

この部長に「人として…」という指摘は当てはまらない。

social relevance assessment(社会的適合評価)は、凄く正しい事を表してはいるが、摘要しにくい。

「忙しい!✴」というのも、この"適合評価"に入らないか?

「忙しい!」

「それだけ会社の為に働いている」

「それは会社にとっては、良いことだろう」

「だから、お前の母親の手術を忘れていても仕方ないだろ?」

…とこういうロジック(理論)ができている。
この『仕方ない』を営業の皆が上手く使っていた気にする。

俺が頭に来てもどこかで、(お前を正社員にしてやったのはオレたちだ)みたいな優位性を見せた。

また、俺自体、営業に誘われても(誰がなるか!)と小馬鹿にしていたし、表立って非難できなかった。

完全に嵌められた。

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ヒールホールドが一度喰らうと、なかなか奪取困難であり、"ダメージ"が甚大なように、俺がハマった、この『俺達(営業)が正しい』という理論は、正に"悪魔のロジック"であった。

その中にいれば、守られ、心強いが、一度抜け出そうとするとなかなか"出して"もらえない。
『お前は、俺達の言うことを聞いておけば良いんだよ』という"パワハラ"に違いない。

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「忙しい!」という言葉には『仕方ないよね』という"強制力"がある。

つまり、『私のせいではないけど、これはやってくれないと、困るんだよね』という圧力がある。
責任の押し付けであり、"パワハラ"と構造はほぼ同じだ。

この『仕方ない』は、社会人の"必殺技"である。

プロレスには派手な絞め技が多い。
ロメロスペシャル。
ドラゴンスリーパー
STF

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…しかし、本気で相手を仕留めるなら、それこそ"ヒールホールド"一発で終わりた。
(同じ事はスリーパーホールドにも言える)

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何故、あんな複雑で分かり辛い関節技を出すのか?

プロレスはショーであり、観客から見られる事を一番の目的にしている。
地味な技で勝ったところで意味は無い。
だから、派手な絞め技が技を繰り出すのだ。

これが"仕方ない"である。

部長が、俺の母親の手術日を忘れていたのも、仕事を優先しても、俺の事など遠慮の外に置いても、仕方がないように、

プロレスラーが通常でのリアルファイト✊ではあり得ない技を繰り出すのも仕方がないのだ。

「人として…」の規定が立場や条件、個人な考えで変わるように、
プロレスの技も、立場、条件で変わる。

"仕方がない"のだ。

仕方ない(忙しい)から、お前の母親の手術の日を"忘れて"も仕方ない。

仕方ない(忙しい)から、連絡するの忘れた。

仕方ないから、お前の"シフト"が無い。

仕方ないから、お前は"解雇"だ。

全て"建前"だ。
そう自ら言い得る"度胸"がないから、『仕方ない』という前提が無いと人に物が言えない。



情けない人間である。

そして、そんな奴等にコキ使われていた俺はもっと情けない。

俺の"仕方がない"を見るなら、この出版社で正社員にしてもらった事や、この営業の皆に頼った時点で、俺はコイツらの『仕方ない』を受けなくてはならず、言わば、"ハメられた"と言える。

この会社に入った時点で、こうなる運命(嫌いな言葉だが…)だったのだ。

誰かにとって都合の良いrelevance assessment(適合評価)で生きていくのは、誠に馬鹿野郎しいのだ。