鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

派遣録⑲ 北野くんと優しさと交渉の必要性

この頃(2007年くらい)、俺がメインに日雇いしていたのは、浜松市中区にある物流倉庫だった。

週1で入っていた。⑧(ロト6オジサンの話)でも書いた物流倉庫だ。

以前から何度か派遣されていたが、この時にはメインに変わっていた。

とにかく広い倉庫だった。

現在もあるが、今は別会社に管理が移行されている、はずだ。

仕事はおなじみの“ピッキング”、『搬入された荷物を仕分け&搬出準備で配置場所から“ピックアップ”』だった。

 

働いているのはほとんどバイト。

で、日雇いを含め、派遣は多かったと思う。

契約派遣だけでは、仕分けきれないから、“泣く泣く日雇いを入れている”という感じだ。

 

そういう事なので、日雇いの立場は極めて低かった。

社員バイト派遣(長期契約)派遣(日雇い)もいう“権力構図”だった。

 

俺たち日雇いは、その日の朝に初めて顔を合わせたような“寄せ集め”だ。

連帯などあるわけない。ほとんどがお金💴目当てだった。(…闇バイトみたい)

 

それでも、俺のように毎週入っていると、顔見知りは増えたし、仲良くなったりもした。(悪いヤツもいたけど…)

 

俺の書いている小説(“合”シリーズ)に出てくる“ゴリさん”や“小塚”などのモデルになった連中に出会ったのもここだ。(まだまだいるんで、まだまだ出す予定)

 

互いに顔見知りになると、言葉を交わすようになり、他の現場であったりもするようになり、世間話したりするようにもなった。

 

1度、その倉庫でひどく人員が少ない日に派遣された時があった。

そこは常時40~50人いないと現場が“回らない”のだが、その日は20人くらいしかいなかった。

だが、社員らは猛然と「急いで働け!」と言うばかり。

日雇いなので、働くのは当たり前だが、人手が少なすぎる。

しかも“この現場が初めて”という“日雇い初心者🔰”が多かった。

なので、『まずは仕事の説明』からなのだが、社員らは全くそれをしない。「言わなくても分かれ!」というような感じ。

 

相当忙しく、普段からそんな態度の社員ばかりなので、その対応は理解したが、さすがに初心者🔰にはキツい。

俺ら“経験者”が少し説明をしたが、その間も社員のアホどもは「喋ってないで、動け!💢」と怒鳴ってくる始末。

さすがに俺も“ぶちっ💢”と来た。

ここ社員らは、派遣、特に日雇いを完全に見下していた。

 

俺も1度、分からない事を尋ねたら、ぶちキレされたりした。日雇いだから我慢したけど💦

 

俺たちは、“最下層”の日雇いだが、ただ黙って何でも従うわけではない。

それに無理なものは無理だ。

これは起こらないといけないと思った。

 

だが、そう思ったのは俺だけではなかった。

 

同じ日雇い派遣で、よく顔を合わせていた“北野”くん(仮名)もそうだった。

 

北野くんは、日雇い派遣で働く人で、この倉庫の仕事で数回会っていた。

“日雇い歴”が長く、作業にも慣れている感じがした。

大人しそうな雰囲気で、俺と話す口調も穏やか。冗談などは言わないが、いつもニコニコして紳士的な感じがした。

以前は道路工事や配管系の仕事をしていたような事を聞いた。

 

そして、何故かいつも作業着で派遣現場に来ていた。それが“本業”のユニホームだったのかもしれないが、彼はいつもそうだった。

 

その時も北野くんがいた。

そして、その社員らの態度に激怒していた。

 

俺は自身の立場から怒りを抑え、黙ったが、北野くんは独特な怒り方をした。

 

その場で怒るのではなく、作業終了後、“作業確認票”(これにサインを貰って派遣事務所で換金する)のサインを貰いに倉庫の事務所に行った際に、そこにいた社員の“上司”らしき人に、直で社員の“態度”を訴えたのだ。

「社員の皆さんは少し横暴ですよ」

「初めて来た日雇いの人もいるんで、そこは分かってもらわないと…」

「いきなり『動け!』は無理があるでしょ?」

 

一緒にサインを貰いにきていた俺は、そう言いながら、事務所の偉い人に詰める北野くんに驚いた。

 

事務所を出てから、俺は北野くんに「あんなこと言って大丈夫?」と心配しながら訊いた。

すると、北野くんは「…あれは言わないと。それに僕は大丈夫だよ」といつものニコニコした顔で俺に言った。

 

俺は北野くんに感心しながら、怒り💢ながら、日雇いと言う立場を考えてしまった。

 

北野くんは、この他にも、俺が社員に怒られたり、注意されたり、嫌味を言われると、よく「…あの人ら(社員)、うるさいよねぇ」とか「大丈夫、大丈夫」と俺を励ましてくれた。

 

こういう人間がいないと、組織や仕事はダメだと思う。

『日雇いは最下層』『とにかく動け』『すぐに理解しろ…』は組織の常だ。

そういう社員ら自体を間違っているとは思わない。

 

だが、その反面。

この北野くんのように接し、さらに己の立場を越えて、“交渉”できる人もいなくてはならない、と思う。

 

厳しいだけではダメ。

優しいだけでは、組織がダメになる。

 

確かに、日雇いなどは、“その日限り”の臨時雇いに過ぎない。

だか、たまには北野くんのようにそんな俺たちの気持ちに“沿える”人間もまた必要だ。

「気にするなよ」

「まあ、頑張れや」

「あーいうヤツ、どこにでもいれよな😏」

そんな言葉を聞くと、日雇いでも少し嬉しかった。

 

 

その後、この北野くんとは、この倉庫のバイトで数度、顔を合わせてたので、派遣会社にこの派遣先からクレームなどは行ってなかったらしい。

俺はこの後、求人誌会社で正社員に“してもらい”、日雇いを“止める”(すぐに再開…)ので、北野くんとは合っていない。

 

だが、彼の優しさや事務所での“詰めより方”や言い方は、“今後の俺”に少し関わってくる。