また同じ日雇い派遣仲間の話を書きたい。
北山(デブ)という嫌な奴がいた。
俺からしたらこいつは仲間ではないのだが、度々と顔を合わせるうちに知り合いになり、何かと話しかけてきた。
彼はとにかく自慢話が多かった。
「どこそこの現場は楽勝だった、疲れた、大変だったが俺だからできた」とか。
「あそこの現場の社員さんには可愛がられている」、「フルキャリア(仮名)の事務所の人間とはもう“昵懇”で、何でも融通してくれる」など。
とにかく、“俺、出来るんですよ”アピール、自己顕示が強かった。
非常に苦手だったが、こうした奴は日雇いによくいた。
本当に“出来る”奴ならば、日雇い派遣などしていないと思うのだが、俺も同じ日雇いなので、よく「ほー」とか言いながら聞いていた。
しかし、話を聞いてみると『フルキャリアの事務所の人間と仲が良い』というのは本当らしく、何故か彼(ら)には日雇いの仕事が融通されたりしている事がわかった。
どうも、人気薄の現場の作業員を確保するため、フルキャリア側が、北山や一部の日雇いにお願いをしているらしく、その分、普段の割り振りを考慮しているようだった。
つまり、日雇い派遣にも“差”があったのだ。
それを知った西田(トラック)などは、俺に愚痴ったりした。
俺もあまり良い気分はしなかったが、派遣会社の人集めの苦労は知っていたので、(…仕方ないのかな)と思えた。