鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

派遣録 46 病院移転(おびえる人=白井)

そして、病院移転2日目。

大きな病院なので、1日では終わらなかったのだ。

俺はこの移転作業の現場を二週間ほど加わる事になる。長い現場だった。

 

例のバカ、…もう仮名で“白井”としておこう。 

俺の小説に出てくる“丸顔の悪魔”白井は、コイツをモデルの一人にしている。

 

白井は俺との“コンビ”を解消し、社員にエレベーター前の大渋滞を訴え、前日の午後から他の部署に変わっていた。

そこは移転作業の中でも、運び入れ先が違い、何なら重要な備品らしく、三基のエレベーターのうち、一つを優先的に使用していた。

ここなら“渋滞”はなかった。

なぜなら、俺たち運送業者の“専用”にして、もらっていたからだ。

 

俺は、一人で怒り回り、俺を巻き込んできた彼(白井)がいなくなり、内心では清々としていた。

そして新しく組んだ顔見知りのゴリさん(仮名)と順調に移転作業を続けていた。

 

しかし、昼休憩前…。

 

「リーダー!」と俺の前に別部署で働いている白井が現れた。

俺「あれ? どうしたの?」

白「リーダー、すいません。PHS、どこかに落としちゃいました?」

俺「はあ?」

 

何の話だか、全く分からない。

白井が言うには、彼の任された移転部署では、重要な備品を扱う為か、日雇い一人一人にPHSが渡され、それで社員や病院関係者から連絡が入ることになっていた。

それをこの白井本のバカは落としたらしい。

もちろん俺とは無関係だ。

俺は「探せよ!」と答えた。

だが彼は「どこに落としたのか、分かんない」と嘆いた。

「なら、社員さんに言えよ?」と俺が言うと、「…いや、怒られるんで」と嫌な顔をした。

だが、俺に頼んでも無くしたPHSは出てくるはずなない。

「社員に謝るしかないだろ?」と言っても「それは出来ないんで…」と断ってきた。

社員に言えないし、謝れないという。

「…じゃ、何しにきた?」と俺が怒ると「リーダー、一緒に探してくれませんか?」と平気に言ってきた。

何でだよ?💢

そして、俺はリーダーではない。

 

コイツは部署変更になった経緯もあり、一人で社員に謝れないのだ。

腰抜け…。

それで昨日まで組んでいた俺のところに泣き付いてきたのだ。

バカなの?

 

だが、仕方なく俺とゴリさんは、白井と一緒にPHSを探したが、見つからず、三人で社員に怒られた…。(何でだよ💢…というか、ゴリさん、ゴメン🙏)

 

この白井のように社員や現場の関係者に対し、異常に怯える日雇いは多かった。

理由は、簡単だ。

怒られたら、“次はない”からだ。

前に書いたスガちゃんのように“早退”させられたり、翌日から仕事が“無くなる”のである。

なるべく、社員は刺激したくない。

気持ちは分かる。

 

結局、午後になりPHSは見つかり、白井はその後も日雇い現場に来ていた。“クビ”にはならなかったのだ。

俺に「リーダー、ありがとー」などと言っていたが、違う現場では無視して来たりした。調子の良い奴だ💢

 

またその現場では、白井はやけにその現場の社員のウケがよく、馴染んでいた。社員らと一緒にメシをくったりしていた。本当に調子の良い奴だ。

うまく立ち回っていた。

 

日雇いの立場は弱い。

白井のように生きる者も多い。

いちいち俺に“頼ってくる”のは参ったが、気持ちは分かってしまう。

 

俺はこうしたバカが好きではないが、そうしないと生きていけない奴がいることは認めている。