鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

2/4 エカチェリーナの憂鬱

※続き

現場を仕切るエカチェリーナが周囲に当たり散らす理由は、この会社の、いわゆる"ブラック"な体制にある。
『予算は無い』
『人件費を抑えろ』
『成果を上げろ』
そんな要求を現場にすれば、するほどエカチェリーナは現場で威圧感を増す。
バイトらに当たる。
なので、バイトら次々と辞めていく。
人の出入りが激しい会社だった。
(俺はフリーランスの"業務委託"なので期間終了までそのままだった)

バイトが辞めると、人手は足りない。
人手が足りないから、データ処理はさらに遅れがちになる。
そして、またエカチェリーナは暴れる。

…という、"無限地獄"のような展開になっていた。

エカチェリーナはわからないのだろうか、自分の怒りが『何に対して』なのかを…。
そして、自らが怒られば怒るほど、怒る理由が増えて行くことを。
哀れだった。

周りのバイトも可哀想だが、エカチェリーナ自身も哀れだ。
彼女は自分で自分の首を絞めているようなものだった。

一度、エカチェリーナと"普通"に会話した事がある。
その話したかは優しかった。
彼女は普段は普通に話せる物わかりの良い社員(主任)に思えた。

彼女は自分が会社によって醜く変えられている事に気付いているのか。
本人もそんなに怒りまわりたくはないだろう。

では、会社はそんな彼女に、この状況に何かしたのか?

この会社では『社員、アルバイトのモチベーションを如何に上げるか』というテーマで真剣に会議をして、それを撮影、DVDに焼いて回覧させ、レポートを出させていた。

たまたま、そのDVDを観たが、歯の浮くような言葉の連発だった。
『我々が中心となって…』
『こちらの意識が高ければ、必ず…』
『バイトさん達の意識は、私たちからの呼び掛けで…』

また、バイトらにアンケートを取って、現場の不満を吸い上げていた。

それらを見ていて、これでバイトが辞めるのに歯止めが掛かる気はしなかった。

『意識改革』『働き方改革

最近よく聞く言葉だ。
だが、働きを"させる側"の意識を変えても、働く"側"の意識も変わらないと意味がない。

その会社の社員やバイトへの"要求"は、冒頭に書いた通り、『効率的で、安価。さらに成果第一』。

だから、バイトらに望む"要求"は高くなる。高いハードルを最初から設ける。
それに付いてこれないバイトには"指導"というなの罵倒。

それが、バイトの辞める理由に繋がっていた。

そして、こうした"現状"を添わずに改革を叫んでも意味があるとは思えない。
その時の現場の状況で、『社員の意識云々が…』と言い出しても、すでに遅い。

そのアンケートが、派遣の俺達の方にも来たので、思い切って『バイト増員案』を書いてみた。
要約すると…、

まずは、募集要綱や最初の"ハードル"を下げて、人員を大量に入れる。

入って来たバイトにはまで通り、ビシビシとスパルタで鍛える。

辞めたいバイトは辞めていただき、"付いてこれた"バイトだけで業務を続ける。

これしかないのではないか。
間口を広げ、働き出してから"削る"。
これしかない。最初から多くを求めない。"出来る人間"だけを選択する。
『初めは優しく、一度来たらスパルタ。…酷い』と言われるのは"覚悟"してもらう。
そうしないと人は育たない(…と言う面もある)。

嫌なら、辞めたら良いのだ。
ここまで来たら、この職場にはこの方しかない気がした。

だが、会社側からは『酷くないか?』とか、『バイトの大量採用なんて、"初期投資"が掛かり過ぎる』と批判された。

だが、採用を絞れば、『応募者』自体が来ない。それでは、今と何も変わらない。
また、会社と"ベストマッチ"だからと言って、そのバイト、社員が必ずそこに定着するかどうかはわからない。

ならば、最初にたくさん入れて、"選別"するしかない。
『"選別"なんて、上からで偉そう』と思うかもしれないが、最初から期待値を上げて採用しようとする方が、俺には"高慢"だと思える。

人は人と揉み合い、ぶつかり合って磨かれる。
エカチェリーナの怒りを観るに、最初から出来ないバイトに"言われた通り"に動く事を強要していた。

それでは、ダメだ。
まずは揉みて、育てる事を考えないと…。

『やってられない!』と言うなら辞めていただけたら良い。その方が健全だ。
そうして、人間と会社は大きくなっていくのではないか?

だが、その会社は今も変わらず、会議で意識改革を論議し、現場ではバイトを雇い続け、そして辞められ続けるという猛烈な"ブラック"な人間消費を続けているらしい。

エカチェリーナは今も憂鬱な怒りを振り撒いているに違いない。