鈴木篠千の日記

2度目の移籍。浜松近郊でフリーライターしてます。①日記(普段の生活やテレビの話題と社会考察) ②プロレス心理学(とプロレス&格闘技の話) ③非居酒屋放浪記 ④派遣録(派遣していた&いる時や過去の話)

派遣録 52 神社修理(礼儀)

2008年の秋頃、仲良くなった“カトウさん”(仮名)から、病院移転の現場で、日雇いに誘われた。

 

カトウさんは少し不思議な日雇い労働者だった。

俺達とは“フルキャリア”(仮名)の現場でよく顔を合わせていたが、他の派遣会社に登録していて、そちらの方によく行っているらしかった。

よく「昨日、豊橋だったよー」とか「次の現場は静岡(市)かぁー」などと言っていた。

 

俺も他の派遣会社に登録はしていたが、前に掛川の“劣悪”な現場に回されたりしたので、断っていた。

 

そんなカトウさんが、休憩中に俺達に「ここ(病院移転)が終わったら、一緒に別の現場行かない?」と誘ってきた。

それはフルキャリアの派遣仕事で、『建設現場の補助』だった。

何故、フルキャリアの仕事をカトウさんから紹介さるのか分けなかったが、先に“フルキャリ”から話をもらっていたのかな?

 

病院移転の仕事は2週間を過ぎ、そろそろ終わりが見えてきた。

次の現場が決まってない。

俺と“西田”(仮名)はその場で、その仕事への参加を決めた。

 

で、数日後、その現場(神社)へ向かった。

ちなみにそこは俺が解雇された求人誌の会社近くであり、少しドキドキしていた。

 

仕事は神社(と社務所)の建築現場から出るゴミの回収だった。

大工らが屋根やら建物を作っていて、そこから出てくる段ボールや木片、木くずなどを集め、廃棄できるように固める仕事だった。

 

日雇い仕事なので、それほど難しい作業ではなく、段ボールなどを作業場から回収すれば、後はひたすらゴミ袋やらにぶち込めば良かった。

俺とカトウさん、西田はひたすら集めまくっていた。

 

神社は屋根が既に真新しく設置されて、そこを大工らが忙しく作業していた。

 

俺たちはそこに行き、大工らが落としたり、捨てたりする“ゴミ”を「これ、(捨てて)いいですか?」と確認して引いてきた。

 

作業を開始して数分後、俺が大工が捨てた木くずを回収しようと「いいですか?」と尋ねると、若い大工が何か言った。

その言葉がよく分からず「はい?」と聞き返したら、即ぶちキレされた。

それも聞き漏らした事ではなく、自分に『はい?』と聞き返した事に怒られた。

「『はい?』じゃ、ないだろ! 分からなかったら『何ですか?』だろ!💢」

俺は頭にきたが、我慢した。

 

この現場は何故か礼儀に厳しかった。

この若い大工に限らず、西田も年配の大工に「語尾を伸ばすな!💢」と怒鳴られていた。

 

俺はカトウさんを何度か見つめたが、彼は何の反応もしなかった。

 

昼に三人で昼食を食べていたら、「そんなところで喰うな!」と何故か怒鳴られた。

食べていたのは、神社の奥、人目に見えない位置だったのだが。

 

仕事自体は、そこまで大変ではなかったものの、何故か異常に礼儀正しくする事を求めれた。

何故か、日雇いを弟子扱いするのだ。

俺達は大工になりたいわけじゃない。ただ金の欲しい日雇い労働者だ。(言葉にはできなかったけど)

 

こんな現場、初めてだった。

それまで、返事や敬語の“お小言”をもらうことはあったが、言葉使いや話し方まで注意されるのは意外だった。

ここまで、求められる事はなかった。

 

確かに日雇い労働をする者は、あまり礼儀が良くない。

挨拶もできない奴もいたりした。  

 

だが、俺でも最低限の挨拶はするし、返事もする。感謝の事なども言う。

…たまに言い過ぎりしたが?

 

ここはそれ以上の“礼節”を求めてきた。

とにかく、大工らには平身低頭。とにかく言うことを聞いて、反抗どころか、その反応だけでも注意された。

(刑務所?)

刑務所など入った事もなかったが、そう思えるほど、礼儀に厳しかった。

 

かなり驚いた。だが、苛立ちはなかった。

(…こんな現場、あるんだ!?)と思った。  

(古!)と思った。

 

おそらく、『日雇いと言えど、この現場に来たら、俺達の“下っ端”、“見習い”』という意識だったのだろう?

古い師弟制度みたいなものを強要してくる現場だ。

 

こうした態度が、日雇いを雇わざる得ない理由なのだろうが、おそらく何年もこうした“職場風土”なので、変えられないのだ。

 

こちら(日雇い)は(俺たちにそこまで求めてこられても…)と思った。

で、(…もう辞めておこう)となる。

 

 

おそらくだが、カトウさんはフルキャリ側からこの人気の無い現場の“人集め”を頼まれ、俺達を誘ったのではなかったか?

 

仕事か終わり、作業確認書を現場監督に記入されている時も、ブツブツと注意を受けた。作業自体ではなく、言葉使いや話し方に対してである。

 

からしたら、『それがどうした?』という歯ならだが、こうした事に拘る現場がまだあるのも、意外だった。

 

そして、2度と来ないことを誓い、カトウさんに文句こそ言わなかったが、(…もう頼まれるのは止めよう)とも思った。

 

その後、カトウさんとの間に隙間が生まれた。